ワインや料理を楽しむためのマナー、豆知識を紹介します。

グラスの話1

 

 

 

バルセロナにて

4月23日はサン・ジョルディ。
バルセロナのこの日はカタルーニアの人たちの聖なるお祭りである。
男女問わず赤いバラを贈りあう。また本をプレゼントする日でもある。街中がバラにあふれ、即席の本屋が建ち並ぶ。

 

 スペインでは北のバスク、カタルーニアと南のセルビア、アンダルシアと経済力に差がある。バルセロナでも港に近い旧市街地と、山手のガルシア地区と別れている。ガルシア地区には銀座通りのようなメインのガルシア通りと、その隣に日本の原宿のようなramble de calunya通りがある。通常はおしゃれなカフェ、高級ブランド街で買い物をする観光客でにぎわう所である。
この日の主役はおしゃれに着飾ったカタルーニアの人たちのカップル、家族づれである。あちらこちらでカタルーニアのセレブを見かける大変華やいだ雰囲気に街が変身する。
年間何千万人と言う世界でもトップクラスの観光客でにぎわうバルセロナであるが、この日ばかりは主役がカタルーニアの人たちである。
例えシャネルの高級ブティックであっても店先の歩道に仮設本屋が現れ、おしゃれな本を販売し、多くの人たちが覗きこんでいる。
あちらこちらで人だかりができている。スペインではスリが多い事を聞かされてきた筆者も、カメラを掲げて恐れずに押しあいもまれて中に入っていくと、誰かのサイン会をしている。周りに何人ものガードマンを配しているところを見ると、相当の超有名人であることが解るが、外国人の筆者にはわからない。

テレビ中継も入りramble de calunya通りが遊歩道になり、あふれんばかりにおしゃれが花を咲かせている。

 ワインの話をしよう。ガルシア通りのショパールブティックの前にある高級バルのテラス席。カベルネ・ソービニオンのグラスワインが何と3ユーロ。連日通った筆者にまた来たねと言わんばかりの笑顔を添えてくれた。バルセロナにも店舗数を拡大し続けているスタバのカフェラテが3.4ユーロ。サン・ジョルディのバラが一輪3ユーロくらいからである。

さて前置きはこのくらいにして、バルセロナのグラスの主役はアバック(ABaC)。インターホンを押して予約がある旨を言うとカチッと鍵が開けられる。席に着くと一歩下がってカタルーニアのイケメン給仕長が挨拶に来る。筆者のつたないフランス語では頼りなかったらしく、フランス語か英語どちらで説明したらいいかを聞いてくる。まずカバ、クルグ、・・・を勧めてくる。 
何時も迷うのがこのウエルカムドリンクである。イタリアであれば必ずイタリアのスパークリングワインが用意されている。イタリアのあるリゾートホテルではフェラーリのヴィンテージが用意されていた。その土地に行けばその土地の泡を飲むべきだろう。しかし明らかにプレステージの方が格上ではある。今回はクルグをお願いした。

料理のテーストはバルセロナではまだまだ前衛であろうと思わせる和を志向している。醤油のうまみテーストである。漂泊の途にある日本人からすると、金目鯛の煮付けを想像してしまい物足りない。以前、ミラノのマルケージでフリットを注文をした時梅肉ソースであった。どうしても旅先の疲れ切った日本人には、条件反射的に天ぷらと言えば天つゆを体がどうしても欲がってしまう。いたしかたない。

常にテーブルの気品とエレガントをもたらしてくれるのがサービスを要するワインである。主張の無いワイングラスがワインを引きたててくれる。バルセロナのソムリエは非常に説明が短く謙虚だ。過剰な説明をせずワインを引き立たせてくれる。給仕長にしてもソムリエにしてもテーブルから一歩下がって説明する場面と、テーブルに一歩近づいて話しかけるシチュエーションをうまく変えてくる。緩急交ぜてボールを放ってくるわけだ。

 バルセロナの街はきれいだ。パリのような古めかさがなく街がモダンだ。
(2013年4月 バルセロナにて)

 




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