Lisbon(リスボン)
さて今回のグラスの話の主役はワインである。
初っ端途中経過からのテーブルをにぎやかすワイングラスを見ていただこう。
よくよく見るとテーブルの奥に何やら変わった容器がある。そうサイフォンである。
さあ今回もにぎやかなテーブルクラブの世界へ
今回の舞台はリスボンのミシュランレストランELEVEN。
テージョ川を見渡す丘の上に立地する贅沢なレストランである。
メニューにはビジネスコースもあり、黒いスーツ姿のテーブルもあるが、決してクールビズはいない。
ランチ時間なが品のあるいでたちばかりだ。
料理はリスボンを代表する“オマール尽くし”をチョイスした。
まずスターターはスプマンテである。ポルトガルの地のものを頼んだ。

料理のスタートはトンノ(マグロ)からである。ヅケのような塩っ辛さがなく、かといってビネガーのような酸味もない、和に近い志津香なスタートを切った。

料理ごとにすべてソムリエがチョイスしたグラスワインが用意される。
ソムリエと料理の物語の始まりである。
最初に出てきたグラスワインがリースリングである。

料理もリスボンオマールパラダイスの始まりだ。
ヨーロッパは初夏の号砲とともに一斉に野菜が華やぐ。オマールの赤とズッキーニの花の黄色で描かれる料理のキャンバスだ。

さて次のワイン。2杯目のワインが夏らしさを盛りあげる。一番秀逸。どこのワインか飛んでしまった。

そしてお客をもてなすエンターテイメントが始まる。
コーヒーのサイホンの上の部分に乾燥させた野菜を入れて、オマールからとった濃厚な出汁を下部に入れ、まるでコーヒーを沸かすように、アルコールでランプで熱せられた出汁が上昇し野菜を湯通しする。だし汁に野菜の香りづけをしたわけだ。
料理人が五感を使って私に攻めてくる。

その香りがついた出汁を焦がしたオマールにかけたのが下のプレートである。

そこへ登場するのがロゼである。
ロゼ自体はそれほどインパクトがあるワインではなかったが、次なる序曲であり、ストーリーを進める。

次のお皿はオマールのアラグリルにオヴェック小籠包である。

ここで小休止してレストランからの眺望を紹介しよう。
丘から見下ろす木々の間から見えるのがテージョ川である。その対岸まで楽しめる。

さて最後のメインの前に登場したのが赤ワインである。
ワインはオマールを邪魔しないサンジョベーゼ。マリアージュされていた。

メインは焦がしたオマールとオクトパス。

この濃厚なパンは御土産のしたいくらいだ。

デザートワインはポートワインではなく貴腐ワイン。

スターターも入れてワインを5杯も飲んだのは久方ぶりだ。
オマールと言う単品料理の尽くしにもかかわらず、これほど様々な地域をぐるっと一周したようなストーリーを演出したのがワインたちだ。
実は、ソムリエのワーキングテーブルがこの席から見ることができた。
私のテーブルが開演してから他のお客のものも含めて10種類以上ワインを開栓していろんなテーブルのグラスを満たして回っている。
客の顔を伺いながら、駆け引きしている。次は何を出してやろうかと。
私もソムリエに頼んでワイングラスをすべてステイしてもらって繰り返し残り香を楽しんだ。
最後に、ソムリエがどのワインが気に入ったかを聞いてきた。
やはりサプライズのサンジョベーゼとのマリアージュのインパクトは強かった。
でもソムリエいわく、2杯目のグラスを指してこれが一番飲まれていますよと。


このレストランがなぜミシュラン一つ星かはわからない。
次回またリスボンを訪れる機会があれば、今度は夜のテージョ川を眺めながら、またソムリエの繰り出すストーリーを楽しみたい。
