日本版不動産投資信託 J−REIT



2000年500月23日通常国会にて「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律等の一部改正」 が可決されました。これを受けて半年後の2000年11月には施行されることになります。

これに先立ちすでに三井不動産オフィスビルファンド(住友生命、三井信託、住友信託、野村證券参加)、 森トラスト(大和證券SBCM参加)、三菱地所(東京海上火災、第一生命)等が不動産ファンドを立ち上げている。

アメリカではREIT(リート)として1960年ごろから登場し、 アメリカ金融ビックバン、アップリートの仕組みを経て現在アメリカの不動産金融システムの大きなセクターとなっている。

アメリカでは銀行からの不動産に対する融資は、ノンリコースローンによりその物件だけに担保が訴求する融資形態を取る。 あわせて銀行からのいわゆる間接金融は難しく、証券市場殻の資金調達でなければ不動産投資事業が進まない。 資産を証券化することによって資金を調達しなくてはならなくなった。

こういった事情を背景に不動産の証券化が進んだ。イギリスでも金融ビック番により資産の証券化が進んだ。野村證券がイギリスのロンドンのバーを買い占めて証券化したケースは有名である。

日本でも金融ビックバンが進み同じようなトレンドを示している。 199年以降日本では18件ほどのSPCによる不動産の証券化がなされたが、 今年になり公認会計士協会から証券化により発行される劣後債が、発行会社に保管される場合の上限比率を5%とする考えが出されたため 、事実上SPCによる証券化がストップすると見られている。5%以上保管される場合はオフバランスを認めない考えである。

今回の法改正により新しいSPCの仕組みとあわせて、不動産ファンドがいよいよ始まることになる。 不動産ファンドの特徴は集めた資金で、不動産、或いは信託証券、モーゲージ証券などに投資をして利益をあげ、 その90%以上を配当にまわせばファンドがあげる所得に対して、課税されることなく投資家に配分することができる仕組みです。


資料出所三井不動産ホームページ

アメリカではいろんな形態(パートナーシップ)で所有されていた投資収益性不動産資産がアップリートによりREITに組み込まれた。 日本では当面アップリートの仕組みは考えられていない。

しかし一方で時価会計主義、減損会計の導入などで資産を抱えたままの経営が非常にやりにくくなっている。  最近言われているノンアセットビジネスとは大手不動産会社が、資産を抱えることなく資産を取り扱うフィービジネスだけで経営していく発想である。

前述の大手不動産企業が法律施行より早くファンドを立ち上げたのもそのためである。 現在企業が所有している資産で、財務上の戦略からオフバランスしてもいい物件をREITの移して、 グループ企業の資金で投資をする。そこでフィービジネスを展開する戦略である。

いずれ一般投資家からも東証などで準備されている投信市場を通じて資金を調達する仕組みである。 投資家にしても、低金利の中で利回りのいい投資を選択可能になる。

REITの仕組み

1. 資金2000億円のファンドを組みます。

2. 資金調達は1000億円を株式により市場から、残りの1000億円を銀行からノンリコ−スローンにより調達(LTV50%)。

3. 2000億円の不動産を購入して6%(キャップレート)で運用することにより120億円の家賃を得るとする。その他共役費24億円。合計144億円の収入。

4. 支出として借り入れ1000億円に対する金利を2%として20億円の支払利子をしはらう。 その他支出として共役費に見合うランニングコスト24億円。投資顧問会社へ16億円。減価償却費20億円。合計80億円の支出。

5. 収入144億円-80億円=64億円 1000億円のエクイティーに対して64億円の配当可能収益。

6. 減価償却費20億円+64億円=84億円(キャッシュフロー)。FFO(ファンドフラムオペレーション)は8.4%(84億円/1000億円)となる。

7. 64億のうち90%を配当にまわす。配当金57億5千万円。配当利回り 5.75%。

8. ペイアウトP/Oレシオが68.4%となる。これはFFOから配当にまわした率である。この率が高いと配当性向が高くなる。 しかしREITは配当に回らない内部留保金で資本的支出、再投資を行い更なる高い不動産収益を生む努力をする。 日本では一度不動産を買うと最低限の修繕費以外再投資をしない。ここがアメリカと大きな違いである。

再投資をしないと将来収益を生まないばかりか、再投資されていない不動産は高く売ることもできない。 したがって投資家はこの内部留保金がどのように使われているかに関心がいく。P/Oレシオが高く配当がいいものが必ずしも人気がよい訳ではない。 ここが日本とアメリカの不動産投資に対する基本的な考え方の違いである。

9. 上記試算モデルの変数で投資顧問業の手数料が仮に倍の32億円になったとする。FFOは6.8%になる。 投資顧問料をいくら取るか、どのように家賃を上げるか、ランニングコストを下げるかがこのREITの投資の成否となる。投資顧問料を得るためのものなのか、つまり誰のためにREITを経営するかがポイントとなる。

10. アメリカではREIT規模は2-3000億円である。その中でプロパティーマネージャー、アセットマネージャーが不動産収益を高めたり、 資産の入れ替えを行ったりして投資家のために収益をあげている。これらのマネージャーはストックオプションなどでREIT株が上がればその報酬も上がる仕組みを持っている。 つまり投資家の利益と、経営者の利益が一致している。この仕組みができることがREITの大きな鍵となる。

誰のための投資ファンドかという問題は、会社と株主のコーポレートガバナンスの問題でもある。

11. これらのファンドに取り込まれる不動産物件は、収益が飛びぬけて良いものでなくては対象とならない(例えば東京でNOI率5%以上)。 不動産投資事業は今までのように再投資もせずに家賃管理だけすればいい時代ではなく、マネージメントができる人がいなければ市場原理の中で、 敗者になってしまう。ファンドの組み込まれる不動産は銀行にしても融資したい物件であろう。 片やまったくファンドの対象とならない不動産は銀行も相手にしたがらない。

不動産ファンドの考え方は一部の東京のバブルの考え方ではなく不動産投資に対する金融システム、考え方を大きく変え当てしまう。 特に、地方の弱小な不動産物件は入居も集まらないは、再投資する資金の集まらないといったことになりかねない。

今まで同じエリアであれば横並びの家賃が労せずに入ってきた不動産事業が、市場原理の導入により勝ち負けがはっきりしてくる。 これが市場原理に対する不動産イノベーションが必要とされる所以である。不動産のイノベーションとはプロパティーマネージメントであり、アセットマネージメントのことである。 


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