ニュースレター
主筆:川津昌作
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そう言った事を十分にご理解したうえで、ご参考にしていただきますようお願い申し上げます。
なんでも破壊するアメリカ
〈2025年4月10日〉
要約
1. 日本の精通者が好き好んでいう言葉に創造的破壊(イノベーション)がある。
2. 何でもかんでも破壊せざるを得ない理由がアメリカにはある。
3. 効率性だけを考えるのなら破壊的創造は意義がある。
4. トランプが今世界の経済秩序を壊し始めた。
日本ではようやくPS細胞が社会実装し始めようとしている。英字版エコ
ノミストに、スーパーヒューマンは科学の脚色ではなく、いよいよ社会実
装し始めると言う話題が登場していた。以上前置き。
ジャポニズムと言う概念で、日本の和食文化がインバンドを通じ、世界中
で人気を博している様子をマスコミが流し続けている。日本の食文化を輸
出の大きな柱となることについては大いに期待したい。その一方で、和食
がどんどん破壊されている姿は感情的には受け入れがたい。
アメリカはすぐに日本の和食を受け入れた。しかし確実に破壊し続ける。
お寿司のアボガド巻きなどは、ネタを丁寧に仕込んで握るという日本の寿
司職人からすれば、全く異次元の食文化で、それを和食、お寿司と言うの
であればそれはまさに文化の破壊だ。
アメリカは何でも破壊する。日本食だけでない。フランス料理も破壊す
る。これはアメリカ人が認めているところだ。アメリカは異次元の文化を
破壊し自国の新しい文化として逆にグローバリゼーションの理屈で世界に
広める。
そして今、開かれた自由貿易を標榜したWTO体制を破壊し始めた。これが
アメリカが得意とする創造的破壊で、アメリカデファクトスタンダード
のグローバリゼーションで言うところのイノベーションである。あくまで
私見であるが、この破壊は、当事者になればたまったものではないが、新
たなイノベーションを生むには時間的効率が良い。
イギリスで18世紀に起きた産業革命は、それまで手作りの服飾製品を動
力機械化により大量生産化を実現し、服飾製品の生産性を格段に上げた。
このイギリスの産業革命の期間は、諸説があるが1770年代から1850年
代である。
分かりやすく例えれば、イギリスでジニー織機が最初人力による機械とし
て発明された。機械の修理工による試行錯誤に起源がある。このジニー織
機が、石炭蒸気の動力により自動機械化するまでに要した期間がこの約
80年余りとなる。
80年というのは、人の生産年齢世代の2-3世代の期間である。日本のト
ヨタの革新の源もカイゼンにある。豊田佐吉から豊田喜一郎さらにその先
の豊田英二に至る三代のモノづくりの結晶とも言えよう。日々の小さな改
善の積み重ねがトヨタ的革新を支えてきた。多くの時間と労力の試行錯誤
の結果である。
ところがアメリカは1850年に南北戦争を行い独立したのが1860年代
で、建国から今に至るに200年足らずである。300年前は原住民のイン
デアンが採狩猟生活をしていた国である。
建国200足らずの歴史で、80年以上の期間を要する革新方式は実効性が
ないわけだ。そこでアメリカは異文化から文明を輸入し、それを破壊し進
化させて、新しいものを生むと言う文化を実践している。典型が、フラン
ス人が発明した自動車を破壊し革新させた。
一方、日本やイギリス、歴史のあるラテン諸国は、むしろ破壊することが
できず改善進化することを得意とする。イギリスのジニー織機をはじめ
様々な紡織機は、人力の道具を限りなく時間をかけ改善進化させた結果生
まれた製品である。創造的破壊ではない。継承的進化である。
フランス料理にも見ることができる。フランス料理業界は最近に限らず古
くから日本の和食文化の優れたところを認め、取り入れフランス料理を更
に進化させてきた。和食を破壊することなく、あくまでフランス料理に和
食文化をしみこませてきた。
ジャポニズムは、パリのベルエポック前後に、欧米に紹介された日本文化
に触発されてヨーロッパ文化に大きな影響を与えたの概念である。大きな
影響を受けても、一方的に受け入れるだけで、破壊したのを新たな
Japan文化として利用することはなかった。悪く言えば盗み取りかもし
れない。
イタリアで初めてミシュランの星を取った、著名なシェフ、マルケージの
オーベルジュに行ったことがある。イタリアのフリット(イタリア風天ぷ
ら)を日本の梅肉ソース仕立ての非常に丁寧な料理が出てきた。
しかし、日本人の筆者としては、仕事で疲れた旅先での天ぷらは、やはり
天つゆで食べたいという舌の要求と戦い、頭では混乱をしていた。懐かし
い思い出であるが、お互い長い歴史を持つ文化のすり合わせは当然時間が
かかる。でもそれこそが継承的進化である。短時間の創造的破壊ではな
い。
現代版和食のジャポニズムも、アメリカ式創造的破壊として全く違った和
食として普及するのと、和食としてではなくフランス料理・イタリア料理
として継承的革新として刷り込まれるように普及するパターンが想像され
る。
アメリカがデファクトスタンダードになる前から、様々なタイプのイノベ
ーションがあったわけだ。しかし今又、WTO体制の世界の経済秩序を強
烈なアメリカ式による破壊が始まった。効率の良い新しい秩序が生まれる
のなら期待しないわけでもない。
過去から知見を探せば、アメリカが中東に関与し始めてから、中東の秩序
が激変した。オセロゲームのように親米、反米が目まぐるしく変わり、ア
ラブナショナリズム、原理イスラム、世俗イスラムが先を争うように競争
しだした。現状混乱か進化した新しい秩序かは解らない。歴史が決めるだ
ろう。
前回議論した世界中で起きているハウジング価格上昇も、グローバル市場
で財物に取って代り人材知財の移動が起き、それに伴う資源配分の見直し
が、市場ニーズとして顕在化したダイナミズムの一つでしかない。
壊すことが良いことかどうかは別にしても、ダイナミズムを失い行き詰っ
た世界秩序を壊す力があるのは確かにアメリカしかないのかも。壊した
後、良いポジションに着けるよう日本がうまく立ち回る必要がある。
以上
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