ニュースレター
主筆:川津昌作
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「不動産市場の実像」論評
〈2025年5月25日〉
要点
1.日本の不動産経済市場が高度に分化し、成長し始めている。
2.住宅市場と言っても、それに包含される利害関係者は、その立地エリ
ア、市場属性等によって他の市場とは違った投資家、投資マネー、ビジネ
スプレーヤー、投資ビジネスが存在し、固有の市場動向を示している。
3.東京都心好立地の住宅市場は投資市場となりつつある。
今回は、直近の日経新聞の経済教室掲載の「不動産市場の実像」を取り上
げて議論をしたい。今回経済教室には3人の先生方が投稿している。順
に吉田二郎氏の「価格高騰は局地的な現象」野澤千絵氏の「高コスト化す
る街づくり」清水千尋氏の「住宅の投資財化が進む弊害」である。
前回日経の経済教室が取り上げた不動産経済の論壇でもやはり吉田氏と、
清水氏が登場している。当代の代表する不動産経済の有識者である。二人
の違いを私見として述べておくと、吉田氏は海外から俯瞰して日本の住宅
市場を見ることができる。
清水氏は国内の国策に深く関与しながら、国内の様々なデーターの根幹に
精通しており、国内から国内を見ることができる。ある意味両輪的な議論
のかみ合いが期待できる二方である。
子細は新聞を読んでいただきたいが、要約すると表題にあるように吉田氏
は、今東京で騒がれている住宅価格の高騰は、あくまで好立地の投資用高
額マンションに限られた局地的なものであるとしている。
ただこの主張には、深い背景があり、現代の不動産経済の本質的な問題が
あると筆者は考える。まず日本の従来の不動産経済の論壇では、住宅から
商業地、ホテルからヘルス産業、民生製造スペースまで区別なく不動産と
して一くぐりされてしまってきた。
これは特にマスコミに多く見られるが、住宅でも、土地でも、特定のエリ
アでもとにかく何か、何処か不動産価格が上がれば、すべからく土地バブ
ルのような論壇がなされてきた。
これは明らかに不動産経済に対するリテラシーの低さである。吉田氏の論
評はまさにこの点を議論したものである。氏の表現を借りると「不動産は
立地や構造が一軒ごとに異なり、均一的な市場を想定した単純な需要・供
給曲線では説明しきれない。」である。
氏は続けて海外の市場を俯瞰しながら日本のマンション市場の価格の特異
性を展開している。
経済学の祖 アダムスミスの考えを引用すると、そもそも市場は高度な分
化をする事によって高い収益を実現して成長する。単一の一つの商品市
場、ビジネス市場のままでは成長はおのずと限界があるわけだ。
日本の不動産市場も高度に分化して、非常に高い成長を実現しつつある。
これは単純な単一の不動産市場ではなく、住宅市場だけをとってみても、
戸建て住宅市場、マンション市場、タワーマンション市場、賃貸マンショ
ン市場に分かれる。
そこではそれぞれが違った材料資材の供給市場があり、需要となる住む人
たちの属性も違う。当然ファイナンスビジネスも異なってくる。アセット
マネイジメントを行うビジネスパースンも異なってくる。
更にこれが、住宅だけでなく、民生製造業、投資ホテル・ヘルス施設・商
業施設などすべて違った不動産経済構造に分化し、進化している。これら
それぞれに違ったあらゆる属性の収益を普遍化したものが不動産経済であ
る。
それ故、不動産経済を論ずるには、単一市場で不動産市場を考えるのでは
なく、高度に分化し成長しつつある市場を前提に、個々の属性に立ち帰り
検証する必要があるわけだ。吉田氏のいうところの、森と言う不動産経済
を見て、それぞれの属性と言う木を見て考えていない。という指摘はまさ
にこの点である。
これは清水氏の論評で裏付けられている。清水氏の分析は、東京の一部の
好立地高額マンションに海外のマネーが流入したことによって、投資市場
化した結果高騰しているとしている。
もちろん、東京都心部好立地の不動産マンションの高騰を受け、これを避
け周辺に避難せざるを得ない東京在住者の周辺需要による住宅の価格高
騰、その波及効果による更なる周辺都市への価格高騰はある程度起きる。
しかしこの波及効果は、高額住居コストを避けるがゆえに移転する消費行
動である故、価格の高騰はやがて収束するはずだ。
しかし、東京で不動産が高騰したと聞けば、東京都心の不動産全て、そし
てその波及効果として関東一円の不動産全て、いずれ名古屋などの地方都
市もと言う考えは、全く成り立たないわけだ。海外マネーを受けられる投
資の器である投資市場が無ければ、今東京でお生きている不動産資産高騰
のおこぼれはありえないわけだ。
投資市場化すると言う事は、グローバル市場の住宅投資価格と比較して安
ければ、その高い水準に向かって上がりつつける。
尚、清水氏は、海外マネーを投資マネーとして日本国内に誘致できたこと
は、日本のマクロ経済の立場から非常に有意義なことであると特筆してい
る。今、日本では例えば和食文化の世界輸出化を進めて、新たな海外から
国内への投資を標榜しているが、絵に描いた餅でなかなかうまくいかな
い。
日本の住宅市場は市場性の低い制度市場であった。海外からのマネーが流
入し投資市場が成立することは、世界のトップ都市NY、ロンドン、パリ
に遅ればせながらの感がある。もちろん国際投資都市となる弊害もある。
日本国民が排除された海外投資家が闊歩するエリア空間が登場するわけ
だ。
しかしそれこそが国際都市、NY、ロンドン、パリに比肩することを意味
し、吉田氏が従来から指摘するように、これらのトップクラスの国際都市
からすると、と今日の住宅価格はまだまだ安いと言う事になる。
それは、日本の都市構造も国際投資都市としての東京都心、日本の都心と
しての環東京都市、と言うぐあいに高度に分化する必要がある事を意味す
る。
当ニュースレターでも何度も紹介するが、今、日本の一番高い高層マンシ
ョンは二十数億円である。NYマンハッタンの100階建てのペンシルタワ
ー万は最上階のペントハウスが300−400億円である。投資マンション
市場の程度で、この開きがあるわけだ。
清水氏が指摘しているが、今の東京の住宅価格の高騰は政策金利が大きく
影響しているとしている。投資市場ならではの現象だろう。資本市場の金
利ポジションなどの影響を受けて、大きく価格が変動する市場は、普通の
住宅保有者には向かないが、投資家には非常に魅力のある市場となる。
1.日本の不動産経済市場が高度に分化し、成長し始めている。
2.住宅市場と言っても、それに包含される利害関係者は、その立地エリ
ア、市場属性等によって他の市場とは違った投資家、投資マネー、ビジネ
スプレーヤー、投資ビジネスが存在し、固有の市場動向を示している。
3.東京都心好立地の住宅市場は投資市場となりつつある。
以上
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