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主筆:川津昌作
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2026年度地価公示

〈2026年3月18日〉



さて今年も地価経済が動き出した。2026年地価公示が公表された。予想 通りである。名古屋経済圏で重要なトレンドを示している。地価の上昇ト レンドから外れ均衡トレンドに陥ろうとしている。

今回公表の令和8年の全国の商業地の上昇率が4.3%である。これを時 系列でみてみると、 令和8年4.3%、R7年3.9%、6年3.1%、5年1.8%である。

東京圏の商業地 令和8年9.3%、R7年8.2%、6年5.6%、5年3.0%である

大阪圏の商業地 令和8年7.3%、R7年6.7%、6年5.1%、5年2.3%である。

名古屋圏の商業地 令和8年3.3%、R7年3.8%、6年4.3%、5年3.4%である。

これは、商業地の名古屋圏の上昇率が、直近三年で明らかに上昇率の下落 を示している。名古屋の地価の大本営の発表は上昇率の縮小である。特に 今回令和8年では、全国の商業地4.3%よりも低い上昇率となってい る。

更の大本営の発表は、名古屋駅前再開発の中止に関連して、建築コストの 上昇による不動産市場の停滞を大きな理由としてあげている。大本営であ る鑑定士さんの苦渋の顔が想像される。

名古屋経済圏が、明らかに三大都市圏の経済の上昇トレンドから乖離して 下落し始めている。昨年の金融学会中部部会で名古屋の証券業界の重鎮で ある北川彰男先生が、株価の日経平均を7万円を目標に経済が動き出す と発言された。

それに対し私どもが、資産価格の上昇がない限り本当のインフレトレンド にはならないと発言した。名古屋の行政も、日銀も全く認めていなかった が、既に3年前から明らかに名古屋の地価トレンドが停滞し始めている 兆候があった。

あらゆる商いが成り立つのが市(いち)である。この市のスペースとなる 場が不動産空間である。上位の市と下位の場が結合して市場が成り立つ。 市場ではあらゆる商いが様々な属性の利益を上げる。この様々な属性の利 益を普遍化したのが地代であり、地代の現在価値が地価となる。

1990年代のバブル崩壊以降、地価経済は進化を遂げ、定性的な取引価格 ではなく、資本市場のリンクした理論的な収益価格となっている。いい加 減な指標ではない。地価のトレンドはその地域の経済トレンドを明確に表 している。改めて言う必要はないが、名古屋のエリートたちが名古屋経済 の停滞を認めようとしない。不動産経済のリテラシーがない。

名古屋駅前の再開発の延期は、建築の人手不足が主な原因となっているが それは全国同じことである。高い収益が上がっていれば人は集まるし、コ スト上昇も負担できるはずだ。「名古屋経済が停滞していることは認めた くない。しかし認めなくては改善もできない。いや人知れず回復を待てば いい。」おかしいだろう。

名古屋で今起きていることは、不動産賃料がっていない。これには様々な 理由がある。ステレオタイプで出てくる言い訳がインバウンドの少なさで ある。しかし名古屋は昔からインバンドに頼らない経済の強みがあった。 今更上昇率下落の理由にはならない。

相続ビジネスの乱業により、資本市場とリンクした利回り需要を無視した 供給があった。確かに一部マンションでは利回り0%でも建築が進んでい る。しかしこれも名古屋の商業地の下落の要因を説明することはできな い。

指摘しなくてはならないことは、名古屋の都市経済圏の収益が停滞均衡に 陥りつつあることだ。名古屋の都市圏に経済を活性化させるような効率的 な実効性のある新たな民間投資、社会インフラの整備が全くなされていな い。結果的に都市の新しい資本蓄積の循環経済が機能していない。

例えば今回の地価公示が公表がされた日経新聞の県内版に、ジブリパーク の経済効果が掲載されていた。こういった経済効果が名古屋経済圏とリン クしていないわけだ。

また同日、商業地の上昇下落報道の紙面上で、栄の高層メガ商業施設であ るJフロントなどが主体となっているHAERAの竣工予定のニュースが抱 き合わせで報道されていた。

本来なら昨年の栄の中日ビルに続く名古屋栄のインパクトのある再開発に なるべきであるが、果たして地価経済にどれほど影響をもたらすか疑問で ある。

栄には都市構造的に大きな問題がある。近年の久屋大通公園の再開発以 来、中日ビル、今回のHAREAと名古屋駅前の再開発を凌駕するほどの規 模の再開発が続いている。しかしなかなか名古屋経済圏の成長に対する実 行性がない。

それは栄エリアの商圏を担保している交通ネットワークが拡大整備されて いないからだ。大きな交通ネットワークの拡張がなく、前回のバブル経済 以来商圏が固定されている。名古屋駅前は、交通ネットワークの進化によ り、周辺商圏の取り込みが進み日本全国でも比類ない成長が実現できてい る。

名古屋駅前のJR東海高島屋が、本来の鉄道商圏の規模から言えばまだま だ成長の可能性があると明言している。来年で切れるJR高島屋内の東急 ハンズのテナント契約更新をやめた。名古屋駅前の高島屋内でさらに大き なスペースの拡大が可能となった。

好評のアムールショコラをたこ足会場で行っていた。更なる拡張が期待で きるわけだ。開業当時、想定もしなかった日本の巨象新宿伊勢丹、梅田の 阪急との距離をさらに縮める要素が十分にあるわけだ。

栄エリアでは、商圏の成長がないところへ、中心の核となる商業施設だけ が拡大し続ければ、単なる栄エリア内での競争、商機の吸収が起きるだけ となる。栄エリア内で新たな衰退を生んでしまう可能性すらある。栄の商 圏が拡大する社会インフラの整備が全くない。中国の政策で言えば一帯一 路政策がないわけだ。

更に追い打ちをかけるように、愛知県内に社会資本、民間資本の分散霧消 が起きてしまっている。その分三河エリアの地価が上がりつつけている。 三河エリアは産業クラスターの現場である。そこで地価の上昇が起きれば 現場コストの上昇となり逆効果である。

2005年までの万博が開催された時までは、愛知県の法人資本があげる収 益を名古屋の都市部で吸収して、名古屋経済圏の成長が実現していた。収 益の分捕り合戦の話ではない。

資本の吸収の空間調整ができるのは都市部である。これは学術的理論であ る。政治のポピュリズムによる選挙区への社会資本の分散という政治理論 と、都市経済戦略は全く違う。

世界のグローバル都市と呼ばれる東京、NY、ロンドンは、都市そのもの が資本主義の成長エンジンとなり資本を吸収し、都市自身が資本主義のリ ズムのエンジンとなり、その成果を下位ネットワークの包摂的に分配す る。これが先端のグローバル都市理論である。

都市部以外での資本吸収は非常に危険な要素を含んでいる。例えば大きな 工場誘致による地域経済の活性化が起きた場合、かならず外部から労働力 はじめ様々な社会資本を集積する。しかし過剰な資本吸収しすぎるとその 工場が衰退した時、吸収した資本の収益力が落ち、負担が逆に社会コスト となる。

破綻した都市で「誰がこんなおい金がかかるものを作ったんだ!」必ず出 てく非難合戦である。世界の工場エリアの栄枯盛衰を見るまでもない。残 念なことに政治家はどんどん変わり過去の責任を取らない。

何度も言うが過剰な資本の吸収調整ができるのは都市部である。これは意 見ではなくデービット・ハーベイに象徴される資本主義の理論である。

資本主義の成長にはリスクがある。つまり波がある。その都度、資本の最 適な配分機能が必要になる。つまり資本供給の調整が必要となる。成長期 に過剰な資本を吸収し、停滞期に新たなリスクマネーを供給する空間調整 機能を担うのが都市と言う器である。

愛知県、名古屋市は2010年以降このような当たり前の都市政策理論を全 く無視してきた。

三河地区で蓄積される過剰の資本を名古屋都市部で吸収していた2007年 秋のリーマンショックまでの名古屋経済圏は順調であった。万博開催時名 古屋都心の社会資本整備が進んだ。

その後名古屋経済の資本の吸収蓄積が進まず、名古屋駅前エリアの鉄道に よる岐阜・三重からの資本吸収と商圏の拡大による成長だけがけん引役と なっていた。そして今名古屋駅前の資本吸収機能が不透明となってきた。 明らかに都市戦略と言う地域政策が停滞してしまった。

ボディーブローのように名古屋都市部の収益が停滞し、それが不動産賃料 に顕在化し始めている。名古屋商工会議所が構想している名古屋都心に交 通ネットワークのハブ機能を作る政策は理にかなっていると考える。

やはり愛知県の三河の産業クラスター群と名古屋の都市経済を直結する交 通インフラが必要になる。生産・消費・投資の経済循環エコスステムを構 築する必要がある。新しい交通ネットワークのエコシステム構築による名 古屋都市圏経済の再生である。

トヨタの技術革新は世界の最も高いところで最高のレベルの開発が行われ る。これは名古屋大学でも追いつかないレベルだろう。したがってこの技 術開発の投資を名古屋に期待しても意味はない。

しかし三河地区の世界に比類のない産業クラスターの中小構成メンバーの 消費、投資を支える様々なマッチング、ケミカル効果を名古屋都市部で支 援する必要がある。

更に高い消費の受け皿となる都市機能、高いスキルに対する投資 の受け 皿となる高度な集積機能おw名古屋と言う都市部で直結する仕組みが必要 になる。名古屋都市経済と三河資本を分断するような政策は、資本主義経 済理論を無視する行政政策であり間違いである。

                            以上

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