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主宰:川津商事株式会社
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年末特別号−「収束」と「拡散」

〈2011年12月25日〉

今年はすべてが東日本大震災に集約される年であった。と言いたい が本当にそうだろうか?もっと震災に関心が集約されていれば、も っとスムーズに復興が進んでもよさそうな気がする。

現実には、震災復興になかなか「集約」できていないのではないだ ろうかと考える。市場にしても、社会にしても収束せず拡散してし まっているのが、今のフラットな社会の特徴である。震災復興に特 化しようとしても、特化できない社会になってしまっている。

例えば、「今年は赤色がトレンドであり、赤色の服が流行となる。」 と予測しよう。これは市場の嗜好が赤色に集まり、いろんな赤関連 の商品に対するニーズが出てきて、それにビジネスが応えることに よって消費が喚起され、市場のビジネスが活性化されることを意味 する。

つまりトレンドができると言うことは、ニーズが「収束」すること を意味する。これまでの経済メカニズムは、市場が収束し均衡が生 まれる前提で機能していたわけだ。ニーズの「集約」、イコール、市 場の「収束」と言う意味である。

これは社会も同じである。意見、考えが収束して一つの考えが生ま れて、それが民意となってはじめて民主主義が成立してきた。しか し民意が拡散してまとまらないと民主主義は成立しない。誰かが独 断で決める社会主義のほうが効率よく機能することになる。

中国等の非民主主義国のほうが経済スピードが速いのは、正にこの 現象である。中国から先進諸国の民主主義に突き付けられた問題的 である。

収束して均衡点が生まれることが、資本主義社会、民主主義の大前 提にあったわけだ。しかし収束せずに拡散してしまうのが新しいフ ラット社会の特徴である。

なぜそうなったかということは、一つにはインターネット、情報革 命等のフラット化現象にある。これはフラット社会に関する書籍が 多く出ているのでご確認していただきたい。

もう一つの原因が、市場、社会におけるリスクの急増である。リス クは不確実性を意味し、変動させるものである。均衡点が変動し不 確実なものになると均衡に向かう市場トレンドも弱くなる。

市場トレンドが弱いということは、ニーズ自体が不明確でビジネス が成立しにくくなり、市場経済が弱いことを意味する。

ではなぜリスクが増えたかという問題がポイントになる。震災で言 われたのは日本人は冷静で略奪もせずに、騒ぎもしないと言うプロ パガンダがなされたが、そうであればリスクが実態以上に増幅する ことなく、むしろ減少して均衡が見いだせれるはずである。

リスクが新聞紙上などの論評に急増しだしたのが1980年代以降 である。筆者がいろんなところで言ってきたが、どんな経済行為に でも頭にリスクをつけて説明するだけでにわかリスクに精通者にな りえた。

日本ではリスクと言う言葉を使って、社会・市場をあおってきた。 これは英字新聞を見ていても同じことが言える。ただ単にリスクを 連呼しているだけで、それは社会を「あおっている」と言われても 仕方がない状況に見えてくる。

名古屋も、大阪もいろんな政策が収束せずに乱立するだけで何一つ 実現できないとなると、そこには民主的な話し合いより、独断的な リーダーが求められることになる。

国政では独断できるリーダーが出てこないため、何一つ動かない。 すべてが拡散してしまっている。

大阪で新しいリーダーが登場し、大都市の新しい政策が動き出そう としている。これに対して名古屋が停滞してしまったかのようにイ メージが悪い。大体名古屋風情が・・・と言わんばかりに、それ見 たことか顔で、陰口が聞かれる。残念ではある。

今回のことで我々が学習しなければならないことは、実際、東京、 大阪以外の小さな地方自治においては政策が政局化してしまうこと は好ましくない。名古屋程度の市場規模では政策が政局化し何度も 選挙を繰り返すと民意は疲れて離散してしまう。まさに収束ではな く拡散してしまうのである。

又名古屋は実業のエリアである。労働組合などのイデオロギー主導、 政治的駆け引きは、むしろこのエリアの経済の足をひっぱる。逆に 実利が収束すれば市場は、政局より効率的に機能し始めるはずだ。

もう一つ名古屋は、流行を追っかけないエリアであったはずだ。名 古屋異質論である。名古屋が走ってもなかなかメジャーにはなりえ ない。もちろんやり方等いろんな問題もあるが、昔から名古屋が突 出すると東京が疎ましく思う歴史は、いまだに繰り返されている。

名古屋出身の人は、歴史的にみても最先端あるいは世界の第一線で 活躍する人を多く輩出している。しかし彼らは、名古屋を特別扱い しようという姿勢を表に出さない。プライドより実利を取りに行っ ている。

市場ニーズを収束し、明確な均衡点(目標)を見定め、強いビジネ ストレンドを確立してこそ名古屋の強みが発揮できるのではないだ ろうか?近畿と連携してというスタイルも全く名古屋にはなじまな い。歴史が実証している。

中央リニア時代に向けて、ビジネストレンドを明確に求めるべきだ。 リニア、東名、第二東名、新幹線と言う経済基軸上と港湾、空港イ ンフラと言う産業インフラのネットワークと、大消費地と言う名古 屋とのリンクを構築する。

太平洋沿岸メガロポリスを意識した収束を、静岡、岐阜、長野、愛 知の民、官、財で意識するべきだ。間違っても自治の主導権争いの 政局にしてならない。中央リニア新幹線の駅建設費負担は正に実利 を取りに行っている。言いたいこともあるだろうがプライドを表に 出さない英断だ。

名古屋経済圏はビジネスニーズの収束をもっと明確に意識すべきだ。 昨年以来グローバル経済では社会基盤整備所謂インフラに対するニ ーズが高まっている。エネルギー、交通インフラである。

JR東海はすでに国内産業ではなく、グローバル企業となってもおか しくはない。東海地方は自動車という交通インフラのハードと、JR 東海と言うソフト、航空機産業と言うハイテク産業を持ちえている。 輸送機器関連産業クラスターである。

JR東海は、鉄道マンの研修センターを静岡に移設していまったり、 工区を岐阜に置いたまま正に拡散してしまっている。鉄道ビジネス は人のサービスビジネスとして非常に大きなピラミッドを構成する 産業である。違った意味で自動車同様に大きな産業構造を持ってい る。

イノベーションは第二次産業と第三次産業のフィードバックによっ て起きるものである。名古屋という大都市圏と産業の現場がリンク して初めて産業クラスターが成立する。

過日新聞紙上で航空機産業関連の産業クラスターを話題に上げてい た。従来輸送機器関連産業クラスターとしてひとくくりにしていた ものが、自動車、高速鉄道インフラ、航空機・ロケット産業に分化 しはじめた。

分化は進化であり高度な収益を背景にしている。これは東海経済圏 のポジションの背景になるはずだ。そしてその中心都市が名古屋に ならなくてはならない。

東海地方の輸送機器関連産業産業クラスターにおける名古屋経済圏 のポジションを確認して、実利とニーズの収束すす方法を改めて考 えるべきである。

今年は震災を経験しパラダイムが大きく変わった。正規分布的発想 からパレート分布的発想である。正規分布は規模が大きくなればな るほど平均に収束する中心極限定理が働く。パレート分布は拡散し て収束しない。

正規分布で考えると、大きな災害、大規模な金融恐慌は、皆想定外 になってしまう。パレート分布で考えると非常に大きな外れ値が稀 ではあるがあって当たり前となる。

収束しない拡散するフラット構造への対処は必要になる。それと同 時に、保守・革新、新保守、茶会・・等のイデオロギーによる対立 はなくなり、グローバルと都市との対立軸が明確になってきている。 中央政府に頼っても意味がないことを示している。

世界中で中央政府・議会制度が機能不全に陥っている。グローバル 市場に対して、名古屋と言う都市が明確なアイデンティティーと自 立した収益を持たなくてはならない。これが今年の様々な出来事の 中で学習しなくてはならないことであろう。

今年もニュースレターを愛読していただきましてありがとうござい ました。あと何年このニースレターと言うビジネスモデルが機能す るかわかりませんが、来年もご縁がありましたらご意見をたまわり たいと存じます。皆様にとって来年もよい年でありますことを祈念 して今年の筆を置くことにします。

キーワード:収束拡散JR東海航空機産業輸送機器関連産業クラスター フラット化円高名古屋経済