ニュースレター
主宰:川津商事株式会社
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新しい愛知のポジション −合従連衡−
〈2012年1月1日〉
明けましておめでとうございます。今年も多くの方と有意義ある情
報の共有をしたいと存じ上げます。よろしくお願いいたします。
昨年末、橋下大阪市長から愛知県知事に、教育改革を連携しないか
と言う持ちかけがあったことが新聞紙上で報道されていた。東京、
大阪、名古屋が連携すれば国家政策に物が申しやすい戦略になる言
うことである。
また田原総一朗が、名古屋だけでなくあちらこちらのメディアを通
じて、石原慎太郎を上げていた。理由は橋下大阪市長に国会議員が
すり寄っている中で、唯一橋下市長がすり寄っているのが石原慎太
郎であり、名古屋、大阪が東京と連動すれば、簡単に体制は入れ替
わるというものだ。
現実性があるかないかはさておき、もしそうなればローカルが中央
政府を蹴落とす新アジアン革命の起爆剤にもなる大きな新しい潮流
になろう。その前にまず現在の世界の潮流を確認しよう。
グローバルゼーションは社会・市場の構造をフラット化した。フラ
ット化は、非常に広範囲で様々な現象を起こしているが、簡単に言
えばグローバル市場に対して広く世界中に点在するローカル都市が、
ヒエラルキーを作らず市場原理により対等に対峙する非常にフラットな構造である。
ローカル都市には東京、上海、ニューヨークから、辺境にありなが
ら高度なサプライチェーンに組み込まれている、例えば東北の産業
拠点まで、大小に関係なく地方都市および大都市圏、国家が含まれ
る。
このローカル都市の特徴は、ニューヨークから中国・インド・ブラ
ジルの内陸部の小さな都市に至るまで、行政的な序列、オールドエ
コノミーのヒエラルキーに関係なく競争優位ある経済スキルがあれ
ば、皆並列に対等に位置している。
このフラット構造を持つグローバル社会では、ともすれば中央政府
もローカル都市と同列の、市場の中で並列に並ぶ一つのセクターに
なってしまいかねない。
しかし政府は、その行政的な性格から、中央政府はその下に東京が
あり、その下に大阪があり、その下にさらに地方都市が連なると言
う垂直統合でしか機能しない。これは明らかにフラットなグローバ
ル社会の潮流に反してしまう。
そこで中央政府をはずして、東京、大阪更にその他の地方都市とが
並列で連携し、逆に何にも決められない中央政府に必要な政策を要
求する今回のような仕組みが登場することは、ある意味必然性があ
るわけだ。
これに対して、中央政府がその機能を各都市に分散して権限を委譲
するのが地方分権である。もう一つは東京・大阪と大都市が都を形
成し、同列に中央政府が位置するシステムもありうるわけだ。それ
が「都」構想のありようではないかと考える。
いずれにしてもグローバル市場で生き抜くためには、中央政府−東
京−大阪ー地方都市と言うヒエラルキー構造は見劣りする。イノベ
ーションがある地方都市が、直接グローバル市場にアクセスするフ
ラットな構造が世界中で求められているのである。
さてそうすると、もちろん対外的な日本国内の地方都市は一丸であ
るが、次のステージとして並列なローカル都市群にも当然分化が生
じる。分化は収益が高度になっていく過程で当然生じる現象であり
悪いことではない。
かつては、強いものに群がり一つの強者を形成するのが社会の潮流
であったが、現在はグループが必ず存在して全く相容れない併存を
している。ありえないと思うが、極端な話東日本はアメリカ派、西
日本はアジアに傾倒するようになるかもしれない。
この、何れはグループの分化を見据えた、将来の愛知の戦略が必要
となる。冒頭の教育改革のように東京、大阪、名古屋と一丸になる
のであれば、現時点では当然乗るメリットはあろう。
河村市長に対する好き嫌いはあるが、このような他に率先して主体
的に改革の一翼を担う立場になれば、その存在は無視できない。
しかし、このまま東京と大阪が何時までも仲良く連携するかどう
か?は疑問である。本来大阪を見下す東京、大阪文化を拒絶する東
京が、まず二極化することが当然予想される。
その時愛知はどうするか?独立独歩を取るか、大阪に連合するか?
東京に連合するか?と言うことである。
過去にも中部の企業を舞台に、東京にくみするか、大阪にくみする
かと言う選択肢に直面する機会が頻繁に有った。東海銀行が三和銀
行を中心とした大阪系のグループを取り、松坂屋が大丸と企業統合
を選択した。大阪企業を選択した中部の企業人はけしって少なくは
ない。
東海銀行はその後UFJから東京三菱に統合され、結果的に大阪色
はなくなった。松坂屋は結果統合したのか吸収されたのか?また、
リニア戦略を見立てて、共立総合研究所の江口氏は名古屋経済圏は
関西経済圏と連携するべきだという持論を展開している。
いろんな議論があることは素晴らしいことである。まず、過去の当
事者に遠慮することなく、これまでの大阪と名古屋の統合、東京の
名古屋の吸収の成果を検討評価する必要があるだろう。フラット化
社会では、評価は非常に重要になる。
評価ができないシステムだったり、評価を妨げるシステムがあるセ
クターは、その存在自体が市場では認められない。考える主婦は必
ず評価をチェックしてから買う。評価がないところでは購買は生ま
れない。
弊社では、以前より独立独歩ができない以上、東京広域経済圏への
参加を支持している。太平洋沿岸広域メガロポリスを構成し、その
中で名古屋は東の東京を補完する西側の核となるポジションを標榜
するべきである。
太平洋沿岸広域メガロポリスを構築し、その域内をリニア、新幹線、
東名、第二東名等の道路で港湾施設、航空施設のネットワークを作
り上げ、世界レベルで生産性の高いエリアとし、東京と名古屋がそ
の両端の核となり、大都市部の第三次産業と域内の第二次産業のフ
ィードバックを可能とし高いイノベーションを生み出すことを標榜
する。
現実には、すでに吸収されるべきは吸収されてしまっているにもか
かわらず、東京に吸収されることに対して、意味もなく魂までもが
吸収されてしまうのではないかと言う、目に見えない恐怖感がある。
物づくりの核となる産業力をよく見てみると、東京の中心部に集積
していると考えられているはずの、スキルの高い企業人の多くはす
でにグローバル市場に飛び出しており存在していない。将来の日本
の経済を担うシニア経済人が必ずしも参集しているわけではない。
今の東京では、所得水準の高い名誉的な管理職、コストを度外視し
て設置してあるデーター管理セクター、やはり生産性を度外視して
いる行政部門、非常にリスクの高い金融資本だけが集積していると
言っても過言ではない。
不動産スペースの需要からみても、中央政府の機能がダウンサイジ
ングし、昨今の様々な問題からデータセンターが光熱費の安いとこ
ろ、安全なところに流出すると東京中心部の生産性は一気に悪くな
る。
純粋に第2次産業による生産が高いところは、関東一円、関西、東
海、九州になっているのが日本の現状である。このエリアがいかに
第三次産業とのフィードバックによるイノベーションを生むか?が
今後の都市戦略となっている。
東京はもはや金融資本による統治しかすべを持っていない。東京に
対する無知な恐怖を連呼するのではなく、地方分権後、フラット時
代の愛知が、どの様なポジションを標榜するかを明確に考えなくて
はならないわけだ。金融資本のファイヤーウォールができていれば、
すべてとらわれることはないのではないかと考える。
名古屋はイデオロギー、政局を避け実利を取りに行くところである。
大阪や東京のように県と市の2重行政がなくなった時、愛知と名古
屋の呼称はどのようになるのであろうか? 政治行政主導の中京都
が愛知県−名古屋の上にくる3重の塔にならないことを希望する。
時代はフラット社会の絶頂期である。
キーワード:産業クラスター、 イノベーション、 フラット化、 太平洋メガロポリス、 輸送機器関連産業クラスター 、 橋下大阪市長、 石原慎太郎、 河村、 、