ニュースレター
主宰:川津商事株式会社
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2012年度年末特別号
〈2012年12月19日〉
今年もいよいよ年末を迎えました。今年一年当ニュースレターを愛
読していただきまして大変ありがとうございました。感謝とともに
今年一年を総集し、振り返りたいと思います。
まず不動産ビジネスで今年一年で最も象徴的な出来事は何であった
とお考えでしょうか。実はこのテーマーは当ニュースレターでは直
接的に取り上げてはいなかったのですが、ビジネスの大きな転機の
象徴として弊社はとらえています。
*マーケティング市場の登場
それは東京の「スカイツリー効果」である。近年最もよく質問され
る事柄に、日本のファンダメンタルズの成長鈍化に対する不動産ビ
ジネスの将来性についてである。そこで逆に皆さんに質問しますが、
スカイツリー効果による、東京墨田区界隈の不動産ビジネスの隆盛
はファンダメンタルズによるものでしょうか?
ファンダメンタルズとは、人口問題など短期的に変える事が出来な
い根底にかかわる要素を意味します。ファンダメンタルを問題する
質問は、不動産ビジネスの将来をファンダメンタルズの縮小とリン
クして考えてしまう人たちに多く見られる。
これに対してスカイツリー効果の本質は、新しいマーケットを創造
するマーケティング市場である。所用の要件であるファンダメンタ
ルズとは全く関係ないマーケティング活動によるものである。
「市場は参入するものではなく、造るものだ。」最近は女子高校生で
もドラッカーを読む時代にもかかわらず、肝心の現場のビジネスパ
ースンがドラッカーを軽んじて読んでいない。
もう10年近く前になるが、ある国際カンファレンスで外国のビジ
ネスマンが発言していた。「日本のリートは世界に比類ない情報の公
開性がありクリーンなイメージがあるが、問題は日本には肝心の市
場がない事だ。」
不動産投資の対象を探した時、東京にしか市場はなく、第二の市場
がない。ということは東京で何かあった時日本国内そしてそれは円
経済圏内の他の市場に動かすことができず、そのまま他の国の市場
に逃避させなくてはならない。それはそのまま円為替などの様々な
リスクをプレミアムさせる必要がある事になる。
つまりかつては、ファンダメンタルズの成長でみんなが均等にビジ
ネスチャンスをえることが当たり前であり、もし誰かが突出してマ
ーケティングを駆使して新たに独占的な市場を作ろうとすれば、出
る釘は打たれる方式でつぶされてしまっていた。
極端な言い方をすれば、全体主導の市場成長であった事になろう。
さてスカイツリーは国の許認可で固まった電波塔である。しかし国、
自治体も含めて、関連する民間企業が、地域を大々的にプロモーシ
ョンし、墨田区にバブリーな市場を作り上げた。
そしてこれは、ファンダメンタルズ型市場成長の終焉であり、マー
ケティング型市場成長の始まりの象徴となろう。
マーケティング型市場成長は、不動産ビジネスに限ったことではな
い。他の市場ではもっと先駆けてグローバル規模で展開している。
iPhoneと日本の携帯電話は、正にマーケティング市場の成長と、製
品市場の衰退との関係で説明できる。
ネット配信、itunesソフトなどによる新しいビジネスモデルにより
新しい市場を創造し、それに必要なアセンブリーを世界中から調達
しサプライマネージメント(最適化構造)を構築する企業が成長す
る。高品質を自負してきたメーカーはマーケティング企業の傘下で
サプライヤーになっていく。
フリースという商品を開発しヒートテック市場を創造して、それに
必要な製品を供給するサプライチェーンマネージメントを構築した
ユニクロが市場を席巻する。
イオン等のスーパーが、セブンイレブンというコンビニが作り上げ
た流通網の上にある市場では、コーポレートブランドを冠にするパ
ワーブランド商品が、プライベートブランド商品によって駆逐され
てしまう。プライベートブランドは口コミ(関係性)を利用したく
みに市場を作っていく。
イトーヨーカ堂、セブンイレブングループではプライベートブラン
ドの売り上げを今の2倍の1兆円規模にまで伸ばす考えを持ってお
り、スーパー・コンビニの棚にはかつてパワーブランドと言われた
メーカーが作り上げてきたブランドの居場所がなくなり、一流メー
カーがマーケットブランドの参加で製品供給をする事になる。
すべてマーケティング市場の成長である。日本だけがファンダメン
タルズ市場にこだわり、その衰退をもうどうにもできない身に降り
かかった災難のように嘆き、閉塞してしまっている。
日本の企業では、参入する市場がないと嘆き、内部留保という蓄財
にいそしみ、市場を作るための努力をせず閉塞しきっている。海外
では成長している企業が新規株式募集を行い、日本では優良企業で
はなく斜陽企業ばかりが市場でお金を調達している。
「内部留保の有力な投資先がない。」それは経営者の怠慢であり、傲
慢でしかない。彼らは参入したい市場を求め、市場を創造する事を
しない。常に市場を作る気概こそが企業の源泉のであるはずだ。
2000年以降始まった、札幌駅前、京都駅前、名古屋駅前、博多
駅前の駅前ビジネスもまた人口の増減によって生まれたものではな
い。ましてや建物の更新がたまたま起きただけでもない。国鉄の規
制緩和、都市再開発による規制緩和等に関連して、市場に投資し果
敢にリスクにチャレンジする民間ビジネスが登場し、新しい市場を
創造した結果である。
何時までも、ファンダメンタルズ型の市場成長を望む者が置いてき
ぼりにされ、マーケティング型市場創造を志向するビジネスプレー
ヤーが成長する事になる。ということはその中で地域自治体、中央
政府、あるいは経済界も従来型の志向ではなく、マーケティングを
支援する政策、その障害を取り除く活動が求められる事になろう。
造られた市場は常に成長し続ける。成長をやめたらそれは終焉の始
まりとなる。これがマーケティング型市場成長の反面である。マー
ケティング型市場は造られた市場であるがゆえに、市場が限られ規
模が小さく、時間軸が短い。
そこではすぐにバブルになる。スカイツリー効果による墨田区では
明らかに局所バブルを発生していた。もうわれわれはバブル戦略は
十分に理解しているはずだ。必要とされるエントリー戦略、イグジ
ット戦略もまた次のマーケティング市場を創造する。
ぬきんでた良い商品を作り、ぬきんでた良いサービスを提供し、潜
在的な市場ニーズを掘り起こしすぎた従来型日本マーケティングは
誰も使わない高品質を売り物としてしまった。
これが意味をなさないとは言わないが、もっと普遍的な良い商品、
良いサービスにグローバル規模で行うマーケティング戦略を用いて、
まるでレバレッジをかけるかのように、そのポイントを増幅し市場
を支配する。これが成長のパターンである。
*国土再編
まず近年グローバル市場で起き来ている大きなトレンドの一つがメ
ガシティーの成長である。これは、グローバル市場が格差を利用し
て成長し、格差の拡大を容認し続けている事を象徴であ。特に新興
国では中心都市がエンドレスシティーと呼ばれるような拡大成長を
している。
これに対して日本では、バブル経済崩壊以降過剰なまでに地方都市
からの資本、労働力を東京一極に集中する政策により、東京の帝都
化が進み、地方が衰退してしまった。イギリス同様日本が衰退パタ
ーンの帝都化構造に陥っていまった。
これに対する政策として道州制が言われているが、これも以前の4
7都道府県に均等にばらまいた配分を、7−10道州に均等配分し
なおす事に違いない。市場に関係ない行政手続き的配分の域を出な
い。何よりも、いまさら東京の地価を下げるようなことは容認され
ない。
既に人口の3割、資本財富にすれば半分近いを東京圏に集めてしま
いそのウエイトで均等に配分しても、地方再生の実効性は期待でき
ないだろう。
市場を見ると、日本で極と言えるのは、関東周辺、東海、関西、北
九州の4極でしかない。東京をグローバル市場の自由都市として開
放し、4極による国土軸の再編を行うことが現実的だ。
東京の自由都市では、投資・ビジネスチャンス・人の交流をグロー
バル市場に開放して、グローバル市場の極となる。関東、東海、関
西、北九州は日本の極となるわけだ。
先般起きた中央自動車道路のトンネル天板崩落事故は、いうまでも
なく高速道路などの国家的な基盤のメンテナンスを要求している。
もしこれがランダムに壊れるのが早い順になされ、お金がなくなっ
たところで打ち切りといった政策になったらどうなるだろうか?
国土軸の再編をまず考えなくてはならない理由は、これから始まる
に再基盤整備の優先順位の指針となるからだ。正に国家ビジョンと
なる。当然そこではある程度線引きがなされ、それ以下の地方がそ
れまでの開発を逆に元に戻す方向になる事も受け入れなくてはなら
ない。
そしてその受け皿が、4極に位置する中心都市となる。この中心都
市もまた市街地の再基盤整備を行わなくてはならない。社会的イン
フラ、民間商業施設、住宅の革新的更新が必要になる。
名古屋は名古屋−豊田に位置する地下鉄鶴舞線の複線化、あるいは
名鉄線の金山から栄への直接乗り入れによる三河地区と名古屋中心
市街地の新しい高速アクセス等の新設により、更なる都市の効率化
を進めなくてはならない。名古屋では中心市街地が劣化しようとし
ている。危険な兆候だ。
この革新的更新は、国に頼るべきものではなき。ファンダメンタル
市場ではなくマーケティング市場的な成長の中で造られなくてはな
らない。そのためには大胆な規制緩和と資金が必要になる。
*資本の再編
本来資本還流の再編は国土軸の再編より重要なことである。バブル
経済崩壊以降地方の資本を効率性の名の元で東京に集めて、効率よ
くグローバル市場で運用し始めた。しかしのその成果である利益は、
すべて東京に集められた東京資本の報酬として、東京に集中する。
これを再配分として地方に行政的手続きを経て配られる。これが現
在の資本還流のシステムである。
この資本還流の現実を修正せずに、道州制などの国土の再編を行っ
ても実効性はない。国内の4極ではその地域で地産地消しある程度
の大きなリスクを取れる資本が必要となる。
グローバル市場では、社会基盤整備を民間に開放し、更に住宅開発
も含めて、これらの不動産開発の資金供給の仕組みが、リスクの取
れない銀行からリスクを取れるファンドに移行しつつある。その一
部が上場されREIT(リート)となっている。
先般又外資のリートが日本に参入してきた。日本では安いデットマ
ネーがあるにもかかわらずリート成長しにくい。リスクを取れるマ
ネーが少なすぎるからだ。リスクマネーの保護育成も必要となろう。
名古屋では10億円以上の不動産開発は、メガバンクが相手にして
くれるような著名な地主しかあり得ない。それは名古屋駅、栄エリ
アの老朽化した商業ビルの再開発ができない事を意味している。
資本の最適な再配分が望まれる。
*市場の大きなトレンド
これまで市場を制してきたものは、クオリティー、価格、ブランド
であった。しかし今市場で求められているのは「関係性」である。
誰かが使ってそれを評価しそれを口コミで拡散されていく関係性で
ある。関係性の無い商品は市場では、その価値を評価されない。
こ関連性の土俵がネットであり、この関係性を制御しようとするビ
ジネスモデルがソーシャルネットワークでありフェースブックであ
る。ネット市場はIBMから始まりマイクロソフト、グーグルそして
フェースブックとそのビジネスモデルを変えてきた。
そしてこの関係性の最適化を図ろうとする理論が「ゲームの理論」
である。近年ノーベル経済学賞の受賞の多くがこのゲームの理論関
連である。近年の受賞者の実の8人がゲームの理論関係である。従
来型の民主主義は成り立たず、ゲームの理論にとって代わられてし
まった。
ゲームの理論とは、与えられたルールの中で最適な答えを求めよう
とするものだ。例えばゲームのオセロは、明らかなルールの下でよ
り多数を競い合うものだ。
しかし筆者が心配するのは、ルールに織り込まれていない要素、ル
ール破りの外的要素に対して、まったく無防備である事だ。この問
題は、最適化を目標のする企業が未知の環境問題を解決できない事
で明らかだ。
日本も今後グローバル社会において、経済、安全、環境、社会のそ
れぞれ最適な組み合わせに左右されていくことになる。鎖国をしな
い限り避けては通れない。安易な最適にこだわらず、大きな価値を
創造する事を見失わないでいたい。
グローバル市場の中での日本の有るべき姿を考えれば、それはその
まま、日本の中における名古屋の有るべき姿の反面教師になるはず
だ。
いつもながら、稚拙な文章にお付き合いいただきましてありがとう
ございました。来年も皆様方に幸多からんことを祈念しまして今年
の筆を置く事にします。
以上
キーワード:マーケティング市場、 ファンダメンタルズ市場、 国土軸再編、 資本の再分配、 最適化、 関係性、 、 、 、 、 、