ニュースレター
主筆:川津昌作
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始まるか?週休3日制社会
〈2022年4月15日〉
さて表題の件である。実は弊社では、昨年4月の当ニュースレター
において、英字新聞の記事から、スペイン政府が公式にfour-day
working(週4日勤労、就学)議論を始めたという話題をとりあげ
ていた。
おおよそ、日本では関係ない話題のように思えた。しかしここへき
て一気に広まる様子が見えてきた。4月12日の日経新聞で、日立
が週休3日制を導入するニュースを朝刊一面で取り上げた。報道で
は他の企業も追随する様子を伝えている。
企業側の論理は明白だ。賃金上昇を避けたいわけだ。賃金上昇を行
わず、就労時間を短縮して生産性を上げれば業績に与える影響は少
なく、生産性向上、ワークライフバランス問題にも一応対処できる
という苦肉の策である。そこまでして名目賃金上昇を避けたいか?
賃金上昇をどうしても避けたい企業の思惑で、おそらく一気に日本
社会で広がる可能性がある。しかも直近である。そうなると週休3
日制の社会風景を議論する必要がある。1992年週休2日制が始ま
った時よりはるかに大きな社会変化が起きることは明らかである。
まず、マクロ経済から言えば結果的に、いま日本の景気にとって必
要とされてきた賃金の上昇ニーズがまたここで葬られたわけだ。物
価高が進む中で賃金上昇が起きなければ、他で余分に稼がなくては
ならない。
低所得者は新たな副業を強いられる社会になるのか?今のハワイが
そうだろう。普通の人が一日2勤で働かないと生活費が賄えないほ
ど物価が高い社会だ。ハワイのような金持ちの遊休生活と、一般人
の一日2勤生活が同居する社会風景だ。
企業にとっても、副業を認めなくてはならない副作用も出てくるだ
ろう。主たる業務と副業が存在する社会風景だ。所得税、労働法も
変わるかもしれない。主たる所得の税率と、副業の税率。主たる業
務の服務規程と副業の服務規程等等・・・。
今まで描かれていた定年後の就労スタイル週4勤が主たる業務のス
タイルになるのであれば、定年の概念も変わってしまうかもしれな
い。更に休みのないサービス業における非正規効用者の労働形態は
どうなるのだろうか?
私どもは、日本のしつこいデフレ経済の要因が、長期の円高基調と
硬直化した賃金労働市場の二つにあったと考えてきた。ここで賃金
上昇がまた葬られると、それに代わる所得増の手段が重要な社会ニ
ーズとなる。これに合わせた社会制度の改革が必要になるわけだ。
週休3日社会風景としては何が考えられるだろう?遊休生活の広が
りで考えると、旅行などの二泊三日の旅行が常態化するかも。二泊
三日でNY旅行ができるような超音速飛行機の復活が早まるかもし
れない。ゴルフ等のような一日がかりの遊休市場が増えることにな
るかも。娯楽・スポーツ・アウトドア旅行の市場は確実に拡大する
だろう。
本来なら、社会人のリカレントが増えてほしいものだ。40代の社
会人のMBAなどの社会人大学院、専門技術学校でのリカレントだ。
社会のイノベーションには最も重要なことだ。
前回の週休二日制が学校で導入されたのが1992年。バブル経済の
余韻ピーク時である。つまり景気がまだまだ良かった時期で、のち
のゆとり教育の発想の始まりでもあった。
“Japanアズナンバーワン”と言われ、「もう裕福になったんだか
ら・・・」とばかりに、欧米並み労働時間をとして、社会が週休
2日制をスムーズに受け入れた。
都市構造も変革が必要になる。週5日の時間を占めていたオフィス
街が週4日のニーズに縮小される。オフィスが3日間不使用にな
る。不動産スペースの生産性の低下だ。逆に週3日しか使わない住
宅問題。週4日だけの単身赴任住居ならビジネスホテルの方が安い
か?
この不動産生産性の変化に対処できないと、不動産ビジネスに対す
る市場ニーズも低下につながりかねない。不動産ビジネスの地盤沈
下となってしまう。
このように考えると、週休三日への激変が起こす社会へのインパク
トはあまりにも大きい。これを企業サイドの賃金をどうしても上げ
たくない理屈で、広げてしまうことは疑問があるが、おそらく世界
の趨勢となって遅かれ早かれ進行することになろう。
以上
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