ニュースレター
主筆:川津昌作
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名古屋都市が儲かるビジネスモデル再構築
〈2023年1月10日〉
2023年あけましておめでとうございます。本年も関係者各位のご
多幸を祈念申し上げます。
名古屋が儲かるビジネスモデルを議論しよう。高度経済成長からバ
ブル経済の間(1960-1990)、名古屋の都市経済は大きく成長した。
都市経済が大きく儲けたわけだ。栄に商業施設が集積し地価が高騰
し、富の蓄積が起きた。
この時のビジネスモデルの収益エンジンが、百貨店であった。最初
はバス、チンチン電車、やがて自動車に乗って多くの消費者が栄に
やってきた。百貨店に群がり、財物だけでなくハイソサエティな都
市中心市街地で有意義な時間を消費し、消費者満足を得て帰ってい
った。
当時の百貨店が、一店舗50万人以上の消費者を要すると言われた
時代、4つの百貨店が栄、名古屋駅に位置し200万人以上の名古屋
経済圏の繁栄を担保できていた時代だ。
この「中心市街地への集積商業施設百貨店」と言うビジネスモデル
を作ったのが名古屋商工会議所をはじめとする東海銀行、松坂屋、
名鉄、中電、東邦ガスいわゆる名古屋財界5摂家がリーダーとなる
名古屋財界であった。行政でもなく、東京資本でもなく、市民革命
でもない。
財界が力を発揮して「街づくり三法」と呼ばれる、大都市の中心市
街地の商業モデルを行政制度的に担保する仕組みを県、市に作らせ
た。明確に言えることは制度が先ではない。商業ビジネスモデルが
先であった。これが当時の全国の大都市で展開した風景である。
行政資本は後付けで、栄に乗っかったに過ぎない。いつしか、地元
財界で作り上げた中心市街地である栄が廃れ、東京資本名古屋駅前
に儲かる成長エンジンを奪われてしまった。そして今、時代は変わ
った。地元財界、地元資本、地元行政、東京資本、トヨタ資本がど
うのこうのと言う時代ではない。
もう一度名古屋経済が儲かるビジネスモデルを作りあげよう。都市
で行われるあらゆる経済活動を包含する器が都市である。あらゆる
経済活動が活性化するように都市の収益構造をデザインするのが都
市経済の戦略である。
名古屋には木曽三川、三河湾、濃尾平野と言う世界有数の産業スペ
ースがある。そして熟成された知とマネーがある。東京−大阪と言
う世界に冠たる経済基軸の中間に位置し、これらの持てる力でこの
経済基軸の成長に貢献して高い報酬を得てきた。このポジションは
今も昔も変わっていない。
特に名古屋経済圏は輸送機器関連産業クラスターを形成して、これ
ら持てる力を有効に投資し、グローバル経済のサプライチェーンに
組み込まれるまでに成長した。この産業クラスターの消費と投資の
セクターを名古屋の都心が担い、このエリアの成長エンジンとなる
べきであった。
しかし一方でこの輸送機器関連産業クラスターは広くは、東の静岡
浜松、西の三重県四日市鈴鹿、北の岐阜・長野三遠エリアにまで間
延びし、中心核が不明確になってしまった。この不明確が名古屋中
心市街地の衰退となって表れてしまったと考える。
名古屋が儲かる仕組み作りは明確だ。間延びした産業クラスター器
である太平洋沿岸・東海の中心を明確にすることだ。つまり交流の
ハブを名古屋の中心にもう一度構築することだ。そこで人、モノ、
マネーが交流し、消費と投資の好循環を通じて、名古屋が得意とす
る熟成と言う化学変化を生むことだ。
既に名古屋商工会議所がリニア中央新幹線の整備に関連して、名古
屋駅のハブ構想を打ち上げている。まさに東海地方の交流の核の再
構築には違いないが、まだまだ後押しする声が少なく、インパクト
がない。
構想にはまだまだバイアスがあり、遠慮が見られる。既存から脱却
は見られず、トヨタと言う昔からの自動車概念、名鉄と言う古い基
盤企業に忖度しすぎだ。しかしいくら忖度しても古くなっていく概
念に寄り添い続けても先はない。
名古屋都心が交流のハブとなるためには、もっと明確な東海経済圏
の都市間交通が必要だ。名古屋市だけで整備される交通システムは
地域の足(各駅停車の地下鉄)でしかない。JRの構想は地域より
日本の旗艦都市の都市間交通であり、時限が違ってきている。
名鉄が広域都市間交通を担っているが、残念なことに50年以上前
の整備の延長しか構想ができていない。50年以上経て周辺都市の
隆盛も大きく変わってしまっている。事実本来の鉄道事業である沿
線からの収益に大きな成長が期待できない状況だ。
リニア中央新幹線の名古屋駅を中心核とした都市間交通(例えば名
古屋駅・栄-三河豊田間をノンストップ30分運航)の新交通システ
ムを、新しく名鉄が整備しよう。新しい交通システムの拠点ごとに
新しいモビリティによるスマートシティーをトヨタが整備する。名
古屋駅前の再開発より優先順位が高いはずだ。
東海地方に広がり間延びしたエリアを都市間交通で関係づけ、その
ハブ機能を名古屋の中心に置き、マネーの投資と消費の拠点を再構
築することによって、様々な出会い、融合、化学変化を創造しよ
う。
この名古屋の中心が名古屋駅、栄となる。そしてこの名古屋駅-栄
が東海経済圏の中心的な経済基軸になる構想だ。商業理論で説明す
ると「どうしても通り過ぎることができない魅力」こそが都市生成
の起源である。効率の良い都市間交通にあって、どうしても通り過
ぎることができない魅力を名古屋都心が持つ必要がある。
かつての「街づくり三法」による中心市街地が繁栄した時代の成功
要因は、商業事業者が中心的役割を果たしたことだ。最近では都市
経済のデザインは都市計画の領域だけで語られてしまっている。街
づくり三法の本質がまさに商業的魅力である。
民間の力で立ち上げたからこそ、リニア構想がかくも早く整備に移
行できた。もちろん民間ゆえの難産があり、特に地方行政・官から
の妬み、横やりは想像を絶するものだ。
もし名鉄が名古屋駅前の再開発を優先してできないのであれば、
FDA(鈴与)のような外部資本でもいい。いっそのこと大丸松坂屋
が鉄道を作ってはどうか?名古屋経済をオープンにして風通しを良
くするいい機会だ。この問題の本質は、民間資本で立ち上げること
だ。行政はビジネスモデルの構築にはそぐわない。
2000年以降の名古屋経済の成長エンジンであった名古屋駅前エリ
アの再開発も、民間によるビジネスモデルであった。名古屋の失わ
れた10年は、逆に考えれば熟成期間でもある。しかし、ぬか床も
放置すれば腐ってしまう。行政が疲弊しているときこそ財界が力を
発できるチャンスだ。
以上
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