ニュースレター

主筆:川津昌作
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インフレマインドの期待

〈2024年1月15日〉

株価がバブル経済以降の最高価格をつけた。懐疑的な要素をあげれ ばきりがないが、遅きに附けとりあえず喜ぼう。中でも東証のPBR 1倍改革が功を奏しただけという批判がある。(PBR:株価資産倍率)

しかしこれも意味のない批判だろう。そもそも1倍以下の企業が 堂々と上場市場に居座っていた事、それを黙認していた事自体がナ ンセンスだ。あまりにも投資家を馬鹿にしてきた。「過度の株主権益」 が聞いて呆れるとはこのことだろう。

市場が常に高い基準で改革を要求し、それに伴って市場参加者が進 化し続けることが市場の健全な在り方である。正常に戻っただけで ある。その改革を評価して株価が上がり始めたわけだ。東証やれば できるじゃんと言ったところだ。以上前置き。

インフレとは、新たな競争と、それに勝ち残るための絶え間ない革 新的な努力を要求する場である。これに耐えられない市場参加者は 市場から去るのみである。

彼らに救に手を伸ばすのではなく、新たに市場に新規参入の枠を用 意することが必要な政策となる。新規参入の増枠こそが規制緩和で ある。この規制緩和を怠り、市場から退席しないですむ救いの手を 伸べ続け、新陳代謝をつぶし続けたのがこれまでの政権政策の失政 である。

日本は岩盤権益の宝庫だ。これらの岩盤権益を規制緩和することを 政権が行えば、市場の高感度は上がる。つまり政権への支持が上が るわけだ。政権支持率向上のネタはいくらでもある。しかしそれを せず岩盤規制を守り続け支持率が下がり続けている。おかしな政権 である。

では問うが、規制によって守られた市場の企業が成功しているか? むしろ低収益に落ち込み競争力を失っているのが現状だ。例えばか つての百貨店業界だ。街づくりの大店舗法を盾に、中心市街地への スーパーの新規参入を阻止し、都心の消費ビジネスを独占してしま った。

その百貨店は、ビジネスモデルの革新を怠り、現在そのシェアを落 とし続け、地方からの撤退ばかりだ。結果的に大店舗法の制度は 瓦解し、新規参入のビジネスモデルであるスーパーの台頭が社会 ニーズに応えたのである。

他にもいくらでも有効な新規参入が実現できていない市場がある。 例えば日本のある設備機器市場である。

商品規格に汎用性がなく、メンテナンスは、最近まで各々メーカー のほぼ独占状態だった。現実にこの市場に新規参入した新規企業 は、ここ半世紀をみても極めて少ない。市場占有率がほぼ安 定してしまっている。

このような独占権益を享受した企業が、高い成長を実現して、世界 に君臨する企業に育っているかと言えばそうではない。国内シェアの維 持安定に満足して、世界市場で成長を示す企業とはなっていない。 その競争力の欠如した市場のツケはすべて消費者の負担となっている。 このような岩盤権益による競争力を欠いたゾンビ市場が日本には多くある。

そもそも冒頭の東証のPBR1倍以下放置ではないが、日本ではこの 様な日本の経済の足を引っ張り続けている市場を検証批判する機関 がない。ドヤ顔で超優良企業として居座っている。このような市場 で規制緩和により新規参入枠を作ることが新陳代謝の受け皿である。

かつて、国鉄、郵政を規制改革した日本の政権はその後も名を残 し、今の自民党のブランド形成に大きく貢献している。にもかかわ らず岩盤権益に寄り添い規制緩和をせず、その一方で支持率低下を 憂うのが最近の政権である。

日本の経済論壇では、スキルが市場価値をなくし失業する人は、その 人個人の問題であって、国、企業がリスキングを補助しようという のが解決策だ。しかもリスキングという言葉の響きは良いが、その 実行に成功例はまだ聞こえてこない。

リカバリのチャンスを与える考え方がない。市場に戻れるリカバリ チャンスがあれば、人は個々人の責任で必要なスキルアップを競争 して行うはずだ。効率が全く異なってくる。

リカバリチャンスとは、市場に新たな参入のチャンスがあることが 大前提となる。つまり岩盤権益に対する規制緩和である。トヨタの 創業精神ではないが、必ず党総裁は一代に一つ規制緩和を行う党 綱領でも作ったらどうか?

ようやくインフレマインドが市場に広がり始めている。市場が将来 の物価高を予想すれば、先高観から物が売れインフレが進行する。 大きな問題がなければ、インフレの進行が今年の経済のトレンドに なるのではないだろうか?今回はこれを議論したい。

もちろん日本のインフレ進行に懐疑的な議論もある。新聞紙上でも 取り上げられているが、そもそも日本の現状の物価高は輸入品のコ スト高によるもので、円安、海外のインフレ、海外の供給ショック が収束すれば、日本のファンダメンタルズはデフレではないかと言 う主張だ。

私どもが海外の市況をリアルに感じた感想としては、特にニューヨ ークでは、財物の値段はそれほど高くは感じなかった。急激な円安 による割高感はあったが、その分を引けば、コロナ前とそれ程違い はなかった。

しかし食品、レストラン、サービスに関してはかなりの物価高があ った。つまりアメリカのインフレの市場感もそのメインが人件費の 高騰によるものと推測できる。

同様に、日本のインフレ感も、海外からの輸入品に対して反応した のではなく、賃金の上昇とともに高まっているという推測は、グロ ーバル市場に照らしてみても整合性がある話だ。

今後賃金がまだ上がるという期待があれば、インフレマインドは更 に高まるであろう。今までにない賃金上昇のメリットを享受したい ものだ。

賃金上昇のメリットとは1.賃金上昇がもたらす直接的な所得効果に よる景気回復。2.賃金上昇による価格上昇に耐えられない低収益ビ ジネスの市場からの撤退。市場の新陳代謝機能の回復。3.賃金上昇 のデメリット・弊害を是正するための労働市場の改革。労働のミス マッチ、制度改革、新規労働力の開拓、業態自体の新陳代謝等々。

最後のビジネス業態の新陳代謝を加筆説明しておく。AIなどの進 化により失われる仕事が生じることはすでに市場は理解できている はずだ。最近の理解は、AIによる仕事喪失が起きるのはホワイト カラーの分野である事だ。

言われているのが、宅地建物取引業、税理士、弁護士などの士業で ある。土地情報のマッチング、会計処理のデーター化、AIによる 判例の調査解釈等がこれに当たる。

つまりこれらの市士業市場はAIによって大部分の業務がとってか わられる。しかしこの失う業務は既存の業務の中でも生産性の低い 仕事であった。人手による非効率な仕事が、新たな技術革新による 効率の良い担い手にとってかわられるのは当たり前である。何ら問 題はない。

この生産性の低い仕事から解き放されることにより、より生産性の 高い仕事に特化できれば、これらの士業は更に進化した業態とな る。収益性の高い法律サポートビジネス、財務戦略アドバイザーで ある。では不動産ビジネスではどのような進化が起きるのであろう か?それを次回議論したい。

                         以上

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