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主筆:川津昌作
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NYCマンハッタンの6 1/2AV

〈2024年2月5日〉

ニューヨーク、マンハッタンのミッドランドにある6 1/2Avenue をご存じだろうか?正確な呼称はSixth and a half avenue シックスアンドハーフアベニューである。

場所はマンハッタンミッドランドの6Avenueと7Avenueの中間にあ り、51stから57thを貫通した歩行者専用の公的な道路である。

マンハッタンは京都のように、縦の12本のAvenue(AV;アベニュ ー)と、180以上の(-th;ストリート)で碁盤の目が形成されて いる。例えばタイムズスクエアは、7AVの42ndである。非常にわ かりやすい。

西のイーストリバーから東のハドソン湾に向かって、12本のアベ ニューがあり、それ以外にマジソンAV、パークAV主要なアベニュ ーがある。基本的に碁盤の目が形成されているが。かつて農道とし て地元民が使っていた斜めの道が、現在のブロードウエー通りとな っている。

この12本のAVの内5thAVが、ご存じNYの高級ブランドブティッ クが並ぶ五番街である。日本ではこの5番街が有名であるが、マン ハッタンを代表するAVが6thAVである。アベニューオブアメリカ と呼ばれ、50階建て以上の高層オフィス摩天楼が並ぶのが、この 6AVである。

7thAVとブロードウエーが交差するところがタイムズスクエアで、 概ね7thAVと5thAVに挟まれたエリアが、いわゆるマンハッタンの 中心街である。

ところが、この6thAVと7thAVの間隔が400m広く、この二つのAV に挟まれたブロックが広く大きい。例えばこの51stの6AVと7AV の真ん中にいる人が、52ndの背中合わせのビルに行こうとする と、500m以上歩いて、ぐるっと回らなくてはならない。つまり非 常に不便であった。

2011年に計画が立ち上がり、6AVと7AVの中間の51stから57stま で、歩行者専用の道路を造る計画が浮上したのである。そして 2012年には完成したのである。

おかしいだろう。ここはマンハッタンの中心でアベニューオブアメ リカと呼ばれる摩天楼が立ち並び、道路なんか簡単にできないだろ う。どうやって用地を収用し、建物を壊し、道路を整備したんだと 言う事になる。

これにはここの特殊な事情がある。6AVと7AVゾーニングの間に挟 まれたニッチが様々事情で公開空地、間所、通り抜け道、隙間とし て存在していた。もちろん大きな商業ビル、ホテル、ホールなども 既に存在していた。結果的にはこれをうまくつなぎあわせたことに なる。

時の運輸省長官私ジャネット・サディク=カーン氏が「地球上で最 も人口密度が高く、最も交通量の多い場所の一つであるミッドタウ ンの中心部に新しい歩行者専用道路を建設した。それを6 1/2番街 と呼んでください」と宣言した。

簡単に言えば、建物内の通路、更には公開用地、間道などをつなげ て一本の歩行者専用の通路が出来上がったのである。ちなみに 51stのこのアベニューの入り口は民間建物で回転ドアを押し開け て入る。必然的に歩行者しか使えない。

私どもが初めて行ったときには、建物のガードマンが入り口に立っ ていた。大きな商業ビルの吹き抜け廊下をしばらく行くと、52nd側 にでる。更に52ndに作られてある横断歩道をとおり、さらに次の 公開空地に入っていく。

大型商業ビル、ホテル内を貫通する吹き抜け通路にはカフェが併設 されており、屋内のオープンカフェとなっている。NYC 6.5Avenue  でググってみてください。いろんな画像が出てきます。中にはこ の通路を歩いてみた的なYouTubeもあります。

最終的に行政が行ったのは、本来NYCではブロックの中間には歩行 者の為の信号、横断歩道がない。この通路に合わせてストリートに 横断歩道、一旦停止、信号による自動車の通行遮断をつなぎ合わせ て、このブロックごとにある公開スペースと言うピースをコネクト した。

そもそも、行政手続きの文化がNYCと日本では違い比較できない が、都市計画の地域から上がったニーズを迅速に整備するスピード 感は、やはり政治システムとリンクした民主主義の効率性の違いと なっている。

日本で、様々な社会資本をコネクトしなおそうとすると、大工事に なる。その典型的な例が、東京の渋谷駅ど現在進んでいる百年に一 度と呼ばれる大再開発である。しかし渋谷でお行われていること が、大阪、名古屋を含めた地方都市でできるか?と言えばまず難し い。そもそも東京でも持続可能な施設なのかと言う疑問もある。

NYCでは、公的、民間を問わず建物、空き地、公園、道路、隙間す べてが都市の社会資本と言う考えがあり、その有効活用の概念が生 きている。特に公園はセントラルパーク、5番街のブライアントパ ークはじめ、殆どの公園が社会資本としてNPOの運営に任されてい る。

今回の6.5Avenue関連の文献を読んでいると、その説明に“high- visibility pedestrian”“Accessibility”と言う言葉が頻繁に登 場する。日本の都市計画ではステレオタイプのウォーカビリティ、 バリアフリーが連呼されるだけだ。

あらゆる人が差別なくアクセス可能な都市、訪れることが可能な都 市と言う概念が非常に強い。巨大な商業ビルもこの概念で作られて いるため、必然的に周辺との人の回遊性に貢献する形態がとられ る。自己中心的な建築概念はない。

都市の全ての施設が社会資本を構築しているという都市計画の概念 が前提となっている。今回の6 1/2Avenue計画の主体的活動母体も Privately owned Public Spaces(POPS)である。

街づくりの有識者の方、NYCに訪れることがあれば場是非訪れてみ てください。一般の方は都市内探検のつもりで訪れてみてくださ い。
参考サイト
https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:6%C2%BD_Avenue

https://en.wikipedia.org/wiki/6%C2%BD_Avenue

https://www.nyc.gov/html/dot/downloads/pdf/201203_midtown-mid-block_cb5_slides.pdf

                         以上

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