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主筆:川津昌作
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賃金上昇だけで本当のインフレにはならない。

〈2024年3月5日〉

株価が4万円を超えて、失われた30年を超えインフレ基調を市場 が認知しだした。本当にインフレになるのだろうか?では日銀は何 を恐れているのであろうか?何がデフレに逆戻りを予感させるの か?

弊社の結論は、賃金の上昇が唯一無二のインフレの特効薬のように 持てはやされているが「賃金の上昇だけでファンダメンタルなイン フレは実現できない。」である。

資産価値の上昇、つまり資産インフレが起きなければ、経済の本当 の意味での、デフレに逆戻りするような弱いインフレでない、ファ ンダメンタルな足腰強靭なインフレ経済にはなり得ない。

かつて1990年のバブル経済時では「愛知県の土地だけで、ヨーロ ッパの小国の全土が購入できてしまう。」と言われたほど、地価が 上がった。資産インフレが起きていたのである。NYのロックフェ ラーセンタービルを、三菱地所が購入したと騒がれたものだ。

日本は、失われた30年と言われるデフレ経済を通じて、地価が下 がり続け。たもしくは横ばい、微増の程度でしか地価の回復がなか った。資産デフレ状態であった。

一方、今インフレと戦っているNYマンハッタンで一番高いマンシ ョンはいくらでしょうか?NYでは現在100階建てのタワーマンシ ョンがどんどん増えている。

セントラルパークに隣接するセントラルパークタワ―の最上階のペ ントハウスが400億円と言われている。ドジャーズの大谷の生涯賃 金が1000億円としても、大谷をもってしても2戸しか買えない資 産価格だ。

こうやって見ると、日本では高いと騒がれている大リーグのトップ の生涯所得がそれ程高くないのか?NYの資産の価格が高いのかど ちらであろうか?

では、日本のマンション価格はどうであろうか?昨年大阪で、日本 最高価格として24億円のマンションが新聞報道を賑やかせてい た。最近では東京のマンションの平均価格が1億円を超えたこと が、やはり新聞で話題になっている。

しかし、NYのマンション価格には程遠い。つまり日本の物価レベ ルでは高価ではあるが、世界水準で資産価格が上がっていない、資 産インフレは起きていないのである。

日本の資産インフレの状況は、現在どうなっているのであろうか。 前回のニュースレターでも取り上げたが、東京ではマンション家賃 が1割も高くなっている。

そもそも分譲マンションが高くなりすぎて、賃貸市場に流入してい るという市場動向である。これは確かに市場メカニズムが機能し地 価が上昇していると言える。ただしこれは日本全国ではなく、東京 に限ったことでしかない。

更にもっと言えることは、日本のなかなか上がらない賃金所得と比 較して、買えなくなってきた程度に高くなった分譲マンションをあ きらめて、賃貸市場に需要が回ってきただけである。

さすがの東京と言えども、日本で唯一市場機能が正常の機能してい る東京と言えども、NY・ロンドンなど世界水準から言えば、資産イ ンフレとは言えない状況である。

逆に不動産市場のインフレの状況を想像していただきたい。景気が 良くなり非常に高い投資利回りも実現されていく。利回りが良くな るから投資が進む。しかしそれとともに資本コストが徐々に高くな っていくのがインフレ基調だ。

資本コストとは資金の調達コストで、市中金利プラス様々なリスク プレミアムである。景気が良くなれば当然市中金利も、リスクプレ ミアムも上がってくるはずだ。投資がどんどん進む中で、資本コス トが低いままと言う状況はありえない。

では、そこで聞きたい。今の日本経済の様々な制約(赤字国債の利 払いなど)の中で、市中金利は、どこまで上がる耐性力があるの か?

私が様々な有識者に対して行った聞き取り調査では、1%台が限度 であろうと言われている。と言う事は資本コストが2-3%と考え て、そのような状況で市場の投資収益が6-8%になることはありえ ないだろう。

成約を超越して資産インフレになり、国の負債が目減りする状況が 生まれないと、望まれるインフレにはならない。賃金上昇はそのた めの第一ステップでしかない。

そもそも、地価の市場メカニズムを刺激して、地価が上昇するよう な政策がなされていない。日本経済の論壇に、マクロ経済で資産イ ンフレの効用をと市場メカニズムを理解できる有識者が少なすぎ る。

最後に、前回のニュースレターで取り上げたが、全国の中で名古屋 の家賃が下がり続けている。これは地域経済の資産デフレの兆候で ある。名古屋不動産投資市場の構造的問題を解決する必要がある。 名古屋の地域経済の存亡にかかわる問題だ。

                         以上

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