ニュースレター
主筆:川津昌作
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サブカルチャーとビジネス
〈2024年4月5日〉
「シャネルのカバンを持って、グッチの靴を履き、ディオールの服
を着て、おしゃれに東京銀座を回遊したい。」「高貴な教養を身に付
け、社会貢献に励む自分を認めてもらいたい。」というハイソサエ
ティな自分に対する欲望。これがプレミアムカルチャーだ。
その一方で「場末のスナックで年増のママを汚い下ネタで口説き、
その場のうっ憤を晴らしたい。」「旦那を忘れて、人目もはばからず
イケメンとデートしたい。」。「人目をはばからず、昼間からビール
をたらふく飲みほし、大きな声で毒をまき散らしたい。」と言う劣
後なサブの欲望もある。
都市経済を考えるとき、プレミアムカルチャーを実現するようなお
しゃれなカフェが並ぶブランドストリートが必要になると同時に、
サブカルチャーの欲望を満たすアンダーなサブエリアも必要にな
る。
都市経済はプレミアムとサブが両輪となって発展する。片方だけが
存在することはない。市場、社会とはそういうものだ。これが今日
の「プレミアムカルチャー」プラス「サブカルチャー」の結論だ。
サブカルチャーと言う言葉は、日本では、アニメなどのエンタメの
ことを意味する。これも、例えば日展などで出品される芸術、或い
は国立劇場で演じられる演劇がプレミアムカルチャーであり、漫
画・アニメ・オタク文化・地下エンタメなどがサブカルチャーにな
ると解釈できる。
サブカルチャーでは、プレミアムカルチャー程厳格なルール、しき
たり、肩ぐるしさはない。多少のルール違反も許される。例えば人
気漫画のワンピースでは、海軍大将のキャラクターなどで、往年の
人気の任侠俳優の菅原文太、勝新太郎、田中邦夫などの実在したア
クターのキャラが模倣されている。
プレミアムカルチャーではこのような模倣は許されない。したがっ
てそれを堂々とやり通すサブカルチャーを、下に見下すところがあ
る。
しかしオリジナルな独創的カルチャーに対し、模倣でも、作り話で
もいいから、夢のような期待を持たせる世界を見たいという欲望を
満たすカルチャーが、補完し合って初めてその時代の文明社会を映
し出すエンターテイメントを形成する。
以上のことは、何度も当ニュースレターで取り上げてきた都市経済
の議論である。経済の市場構造はみなこのようなプレミアムとサブ
の両輪で説明される。
ある技術革新によりプレミアムな収益を生む製品が市場に登場す
る。例えばアップルのディバイスiPhoneである。しかしやがて
これを模倣した製品が登場しはじめる。サブ市場の製品である。
サブの製品市場の普及とともに、プレミアム市場の優位性も薄れて
いく。しかしサブの登場でプレミアムの優位性が薄らげば薄らぐほ
ど、次の新たなプレミアム商品の開発ニーズが醸し出される。サブ
の登場、サブ市場の成長なくしてプレミアムの進化もない。これが
市場進化である。
都市経済のブランドストリートにもメインとサブがある。例えば原
宿に対して、裏原(うらはら)と呼ばれる通りが表参道通に並行し
て存在している。銀座通りにも並行してみゆき通りなどがある。
メインブランドとそれを補完するサブブランドが両輪となって、ブ
ランドがエンハンスされる。プレミアムカルチャーであるメイン通
りだけで発展するのではない。
ちなみに名古屋を代表するブランドストリートは、栄の南大津通り
である。このサブは何処になるか?皆さんはどう考えるでしょう
か?多くの人が、それを明確にイメージでき、メインストリートと
発展的競合できていれば、名古屋のプレミアム市場の成長も盤石で
ある。
南大津通のサブエリアは、ナディアパークを中心としたエリアとな
ろう。しかしこれがもう一つ弱い。ナディアパークのメイン出店店
舗が入れ替わりを繰り返し、安定していないこともそれを物語って
いる。
しかし名古屋にはもう一つ大きなブランドポートフォリオが存在す
る。南大津通を核とした栄エリアをプレミアムカルチャーとし、サ
ブカルチャーエリアとして大須エリアが補完している。栄と大須の
名古屋を代表する強力なブランドポートフォリオが成り立つ。
実は、栄と、大須の間には、100m通り(若宮大通)と言う大きな
障害が存在する。にもかかわらずこの間の人の往来が非常にある。
明確な回遊性ができているのである。
もう一つ事例を紹介しよう。と言うか、上記が今回の議論の前置き
であり、いかが議論の核心でもある。
最近MLBにおける日本のスタープレーヤーの評価が乱高下してい
る。ファンの多い日本人にとっては気が気でない頭痛の種ともなっ
ている。もし何らかの制裁がなされ評価が地に落ちれば日本の株価
が下がるかもしれない。
事件発覚後、日本のマスコミが一斉にスポーツ賭博の社会悪性を連
呼しだした。今日本で開発が進もうとしているIR(統合型リゾー
ト)の核となるビジネスモデルがカジノ(公衆賭博場)に対する批
判も出ている。そしてメインの問題が賭博依存症である。
賭博が良いか悪いかの議論ではない。そんなことは悪いに決まって
いる。しかし現実にスポーツ市場の発展にもプレミアム市場とサブ
市場がある。
純粋な至高の技の競い合いを観戦するプレミアムビジネスに対し
て、スポーツくじなどで盛り上がるサブビジネスがある。犯罪の話
ではない。中の良いファン同士が、話が盛り上がり「じゃどっちが
勝つかかけるか?」となることは普通にあるスポーツの楽しみ方で
ある。
大谷が生涯契約7億ドルともいわれる史上最高の高給の契約が実現
するほど、スポ―ツ市場が高い成長を実現している。間違ってはい
けないのは、スポーツがプレミアム市場の発展だけで市場が成長し
ているのではない点だ。最近のeスポーツの成長にも目を見張るも
のがある。
「純粋に大谷の能力の優位性である。」と間違った論評が日本の論
壇に蔓延している。史上最高の高給の契約が次々と登場するプレミ
アムの市場の成長は、プレミアム市場を後押しするサブ市場の成長
によって実現している。
そのサブ市場こそがスポーツくじであり、アニメであり、スポーツ
ゲームである。サッカーゲームでは、メッシ、ムバッペ、ベリンガ
ム、サラーなどで夢のチームを作り対戦して盛り上がる。そして合
法的な賭博もある。
もっと言えば、アメリカのスポーツイベントには、必ず入場券のセ
カンダリーマーケットがある。StubHub等だ。合法的なダフ屋市
場である。日本ではどんなイベントでもチケットの転売は違法であ
る。転売資金が反社勢力に流れることを阻止するためである。
しかし、チケットの合理的な流通配分を考ええると、価格調整機能
による再流通市場も時には有効となる。再流通すると人気のイベン
トでは大きな再流通利益が発生する。この利益は再流通市場に参加
する人たちの利益となる。こういった利益の還元がまわりまわっ
て、大谷のような高給を実現しているわけだ。
その対極に残念ながら闇の賭博ビジネスもあるわけだ。もちろん違
法賭博は必要悪でもなんでもない。ダメなものは駄目である。しか
しプレミアムのスポーツ市場の発展には、両輪となるサブ市場の発
展が欠かせない。
セカンダリーマーケットが機能せず、サブカルチャーの有効性がな
かなか認知されにくい日本のスポーツプレーヤーの給与が低いのは
当たり前である。結果プレミアム市場の成長も低い。日本が海外ス
ポーツの放映権料の高騰についていけない問題も、行きつく所そこ
になる。
そもそもサブカルチャーの存在意義の認識性の希薄な日本では、ス
ポーツクジ、勝敗ベットがその違法性に関係無く、悪いものとして
議論が始まる。サブカルチャー市場の実効性が高いアメリカでは、
スポーツクジ・勝敗ベットが必要な前提でその正当性・違法性の議
論を盛んにおこなう。
サブカルチャー自体グレーゾーンが広い。したがってその健全性を
保つためには大きな労力がいる。サブ市場を守る立場に立って、そ
の健全性を脅かすかどうかが、アメリカの大谷議論の本質的問題点
である。
かつてのMLBの薬物使用問題も、ある意味、市場の発展に必要な
サブカルチャーの健全性を維持するための議論であった。そのため
に、たとえ超人気のスーパースターと言えども断罪してきた。全く
躊躇ない。
文化勲章の対象となる芸能文化がある一方で、おきて破りの夢の漫
画・アニメがある。漫画・アニメの市場には海賊版がまかり通って
いる。誰もが海賊版の存在を容認しているわけではない。しかしサ
ブカルチャーの市場の普及に貢献していることを否定もできない。
市場規模を考えるとき、その潜在的ニーズとしては、メインカルチ
ャーは氷山の一角であり、その大部分はサブカルチャーではないだ
ろうか?もちろん市場で表に見えているのはプレミアムカルチャー
である。
捨て台詞の結論としては、賭博市場を容認しなければ担保できない
プレミアム市場の成長を追い求めるところに無理がある。そもそも
スポーツ自体が、勝ち負けと言う結果にコミットメントしたビジネ
スであると言ってしまえば、それまでだが。
大きな代償を払うことになるかもしれない。しかし日本人もグロー
バル市場に進出する限り学ばなくてはならないことだ。
以上
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