ニュースレター
主筆:川津昌作
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人口減少・衰退都市の行き末
〈2024年5月25日〉
前回、東京都市圏において2045年までに94兆円の住宅資産価値
がなくなるという論文を紹介した。今回も縮小経済における消滅都
市と大都市の関係を議論したい。まずデータを使い2022年までの
全国都道府県別の過疎市町村の実態を俯瞰したい。
データ(総務省)は各都道府県の全市町村に対して、1「全過疎地
域市町村」、2「みなし過疎市町村」、3「一部過疎市町村」が占め
る割合を求めている。
例えば北海道では、全市町村179に対して1が145市町村、2が
1市町村、3が6市町村で、合計152の市町村が過疎化してお
り、北海道の過疎化率が152/179で84.9%となる。
2022年現在この過疎化率が高い都道府県が、
島根県 100.0%
鹿児島県97.7%
秋田県 92.0%
高知県 85.3%
北海道 84.9%
ちなみに2022年では島根県が100%過疎化市町村とされた。
2022年、過疎化率の低い順が
神奈川県3.0%
愛知県 7.4%
大阪府 9.3%
埼玉県 11.1%
東京都 17.9% となっている。
この過疎化率の全都道府県(一部欠値あり)の総平均の推移を見て
みると、5年間隔の推移が以下のとおりである。
2007年34%
2012年47%
2017年47%
2022年51.57%
都道府県別過疎化率の平均が、15年で17%悪化し、2022年つい
に全体平均が50%を超えたことになる。
ところがこの過疎化対象の市町村の内、最も過疎化してしまってい
る1の「全過疎地域市町村」だけの各都道府県全市町村に対する
割合を同様に5年間隔で推移を見てみると、
2007年27%
2012年34%
2017年36%
2022年39%となっている。つまり過疎化市町村カテゴリー1,
2,3の内、1は15年間で30%台で何とか収まっている。これは
逆い言えば、カテゴリーいの全過疎地域の増加割合より、カテゴリ
ー2,3これから過疎化になりつつある市町村、つまり全過疎化予
備軍のほうが増加していることを示している。
以上、日本の地方の市町村町の過疎の実態を俯瞰したうえで、将来
を私どもなりにまとめてみると、過疎化問題が顕在化している市町
村が順調に増加している。過疎化が進めば、過疎地域の難民が都市
に流入する。どのような形で、いつ起きるかが今後の議論となろ
う。
地方の過疎化は、現在まだ健全そうに見える市町村においても確実
に過疎化が進んでおり、これらが全過疎地域市町村に今後急増させ
る傾向になる。
過疎化は、一定レベルを超して社会資本の維持ができなくなるとこ
ろまで過疎化が進むと、残された住民も一気に大都市部に避難する
ことが考えられる。或いは全国でこのムーブメントが起き始める
と、このムーブメントがまた引き金になり、都市流入問題が複雑に
起きるかもしれない。
次に、今後想定される大規模災害の影響について考える。直近の能
登半島地震は、現在も罹災者の多くの方々が、将来が見えず苦しん
でいる。お見舞い申し上げます。しかし今回の地震のケースでは、
非常に厳しい将来の日本の問題点をあらわにした。
地震発生後4か月を経るが現在なお、能登半島で罹災した市町村
において、例えば水道などのライフラインの復旧すら見通しが立っ
てない。
能登で今起きている状況は、そもそも古い社会資本がその使用限界
状態にある所へ罹災してしまった。そして過疎化が進む中で、残念
なことであるが、復旧工事に着手できる工事業者すら確保できない
状況だ。復旧する財源が市町村町に残っていない。などの問題に直
面してしまったわけだ。
そして仮に財源を確保して復旧したとして、本来の過疎が解消して
人が今以上に増え、復旧費用が将来投資として回収できるかどうか
は不透明である。つまり国、近隣周辺自治体と言えども、社会資本
投資すらできないわけだ。
東日本大震災を引き合いに出すと、多くの方からお叱りを受ける。
復興を否定するのかとばかりに。言いたいのは東日本大震災で行わ
れた日本全国で、復興税を設定してまで行う復旧復興事業は、今後
起きうる大規模災害において、可能かどうかわからないと言う事
だ。
今後何らかの日本の全国で自然災害が起きて、地方の衰退都市の社
会インフラが打撃を受けた時、上記で見てきた過疎化している市町
村では、それを復旧することは期待できないわけだ。そのまま限界
集落を通り越していきなり居住不適切エリアとなる。
前回ニュースレターでも議論したが、都市の衰退問題の解決策がコ
ンパクトシティー政策である。しかし問題は、この政策は自主的な
住宅の誘導でしかなく、過疎のスピードに実効性がないことが問題
視されている。
問題はもっと喫緊である。災害が起きるたびにライフライン、社会
インフラの復旧を放棄せざるを得ない状況が生じ、居住不適切とな
るエリアから都市部への強制移住が起きる可能性があるわけだ。
乾電池の寿命は新品から20%までの減衰は一定の減衰であるが、
残り80%くらいから一気に劣化スピードが高くなると言われてい
る。過疎化も同じことがいえよう。上記過疎化のデータに見られる
ように、今までは徐々に一定の過疎が進んできたといえよう。
ある一定の特異点を過ぎたところで、社会資本が維持できなくな
り、住民が一気に大都市に移転せざるを得なくなることが想定され
る。その他のリスクとして自然災害に罹災しても、それは突然の事
故のように全員転居せざるを得なくなる。
転入が起きる大都市部では、一時的に都市化バブルが起きる可能性
がある。コンパクト政策の意図とは別に参集が起きてしまうわけ
だ。コンパクト化政策をしているところへ人が増えるてしまうとい
うミスマッチだ。
しかしそれも一時的なものであり、さらにそこから先は都市自体が
同じ運命にある。一時的な都市バブルが今後10−20年余りだろう
か?と言うシナリオが考えられる。
以上
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