ニュースレター
主筆:川津昌作
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そう言った事を十分にご理解したうえで、ご参考にしていただきますようお願い申し上げます。
新しい商業市場構造と不動産スペース需要
〈2024年6月25日〉
ネット社会の進化は、従来のリアル空間スペースビジネスに対して
も革新的進化を要求し続けている。従来のリアルな不動産スペース
を使用していたビジネスが、どんどんもっと効率の良いネット空間
に移籍し、従来の生産性の低いリアルスペースは空き家になる。そ
の結果、益々生産性を落としていく。
これをもって不動産ビジネスの凋落の象徴として、市場から低評価
されてしまっている不動産資産が、多く散見されるようになってき
た。今後、不動産ビジネスが、市場が要求する革新的進化をするこ
となく、生産性の低いビジネスにとどまれば、更に凋落することは
明らかである。
今回は先月専修大学にて開催された日本商業学会の全国研究大会の
報告を兼ねて、非常にユニークな研究報告を紹介したい。まず特筆
すべき、今回の商業学会の論題を紹介したい。
「都市をめぐる流通・マーケティング研究の新展開 ―理論と
実証による多面的アプローチー」まちづくりの領域に商業概念
の学会が鋭く切り込んできたのである。
都市では、旧構造物の更新と合わせて、人口減少というファン
ダメンタルズの変化を元に、新しいスペースビジネスの展開と
して、再開発が進んでいる。
更に、商業ビジネスにおいては、SDGsに象徴される市場ニー
ズに敏感に反応している。その結果、消費行動においては「エ
コ」「コスパ」「タイパ」と言った時短・省エネ志向に大きく傾
ている。
つまり、コスパ、タイパと言うのは、単なるZ世代の短期的な
トレンドではなく、このような市場構造の中で、選好されたス
マートな消費形態の帰結と言えるわけだ。
このような研究大会の統一論題を受けて、様々な研究報告・議論が
なされた。その中で、武蔵野大学の菊池映輝教授のオタクビジネス
の報告を紹介したい。
オタクビジネスの象徴の一つに、アニメキャラグッズビジネスがあ
る。この分野でのリーディングカンパニーがアニメイトである。本
店が池袋にあり、この池袋の店舗自体がオタクビジネスの聖地化し
ているといえよう。
アニメイトの売れ筋グッズが、キャラクター、声優タレントが描か
れているクリアファイルである。更に、ここにオタクビジネス特有
のビジネスモデルがある。ランダム販売である。解りやすく説明す
れば、お正月の福袋みたいに、中に何が入っているかわからない袋
売りである。いわゆるガチャである。
オタク愛好家は、このランダム商品を購入し、池袋店の店舗前に広
がる広場で、即席交換会が行われるのである。そしてここで非常に
重要な情報交換がなされ、オタク族のコミュニティーが形成されて
いるのである。
現在のコモディティーの市場の中でも成長している市場構造は、初
動目的の商品購入のプライマリー市場に対して、メルカリ・ヤフー
オークションなどのセカンダリーマーケットによる屋上屋の市場構
造を持つ特徴がある。
従来の自動車市場でも、新車販売のプライマリー市場に対して中古
車ン市場のセカンダリーマーケットと言う二重構造の市場が、自動
車産業と言う非常に大きな市場の成長を支えてきた。
現在のコモディティー市場が、リアル店舗ビジネス、ECを問わ
ず、メルカリ、ヤフーオクに象徴されるセカンダリーマーケットに
よって成長を維持していることも、改めて説明するまでもないはず
だ。
つまりオタクビジネスの成長は、店舗販売でのプライマリー市場の
ほかに、交換会と言うセカンダリー市場を構成し、それがオタクビ
ジネスの成長を支えている。そしてこの交換会を実現するユーティ
リティースペースが、このセカンダリー市場を支えていることにな
る。
私どもが考える不動産の概念(哲学)をここで紹介しよう。
「不動産と言うのはスペースであり場(ば)である。この場の上で
あらゆる商いが行われる。この商いの集合体が市(いち)である。
この場の上で行われる市と場が融合して初めて市場が成り立つ。市
場で行われる商いはそれぞれ様々な属性の収益を生む。この様々な
属性収益を普遍化したものが地代である。不動産経済はこの地代経
済である。」
アニメ―トと言うリアル店舗の不動産スペースだけでは、プライマ
リー市場の提供だけである。しかし同時に店舗前の公共スペースが
セカンダリーマーケットを支え、この二つのスペースでオタクビジ
ネスを支えているのである。
リアル店舗のスペースだけで不動産ビジネスを完結してしまうと、
そこには衰退ビジネス、縮小ビジネスの帰結しか待っていない。ど
のようなスペース概念でビジネスを完結させるか?これこそがまさ
に革新的な不動産ビジネスと言えよう。
高度に集積された商業ビル(丸ビル、六本木ヒルズ)、囲い込みさ
れた商業ブランドエリア(銀座、原宿)、或いは都市という概念に
おいても、商業に直結するリアルスペースのほかに、実効性あるユ
ーティリティースペースがビル施設、エリア、都市の価値を増進す
ることになる。
企業でも、エリアでも、都市でもそして不動産プロパティでも皆商
いを行う器である。この器の中で直接行われる取引によって得る利
益がフローの利益である。
これに対してこの器に蓄積される様々価値がある。例えば企業であ
ればコーポレートブランド価値のようなものである。通常エクイテ
ィ価値を言われる。都市にも都市と言う器に蓄積する価値がある。
都市の魅力と呼ばれるものである。エリアブランドもその価値の一
つである。
ビルの価値を上げるビル施設内のスペース、都市のユーティリティ
ースペース等々、これらをどのようにビジネスとして展開していく
か?これこそがまさに革新的不動産ビジネスである。
以上
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