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主筆:川津昌作
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都市のマッチング機能 ステーションAi

〈2024年10月5日〉

ステーションAiに関する報道が賑わっている。ソフトバンクが愛 知県の整備運営事業者の選定を受けて、日本最大級と言ううたい文 句でスタートアップを支援するための器の運営が開設された。

入居する企業はトヨタ自動車、アイシン、ノリタケ、日本特殊陶業 と言う名古屋を代表する製造業に、メガバンク、中電、東邦ガス、 名鉄に加え名古屋大学、名古屋工業大学と言うオール名古屋であ る。

今回は、名古屋経済圏の都市経済にどのような可能性があるかを議 論したい。

まず名古屋都市経済の従来の背景を見てみよう。高度経済成長期か らバブル経済にかけて大きく今の名古屋の都市構造が出来上がっ た。バブルの最後の象徴が栄のオアシス21である。

従来、名古屋駅前には東京資本の企業が集積し、栄の広小路に名古 屋地場資本の東海銀行はじめ金融機関が集積した。東京からもたら された国土政策に関する情報(補助金)に基づき、金融ビジネスと その周辺に立地した建設企業がマッチングした。

当時の名古屋の都市構造は、広小路の中心部でマッチングが起き、 具体的な投資ビジネスが展開したのである。更に都市経済では投資 には消費が伴う。

広小路を核にその周辺に人々がアフター5を行う社交場、更には物 販など百貨店ビジネスが隣接した栄で隆盛した。都市構造の核では マッチング起き、その化学変化を求めて投資がなされ、同時に消費 が誘発する。

これはまさに経済の器である都市である。バブル崩壊まで名古屋の 都市構造は、経済を実現する効率の良い構造を標榜して成長してき た。都市のマッチングは新たな投資を誘引する。同時に投資は消費 を伴う。

しかしその後、バブル崩壊、金融資本の自由化、人口構造の変化に より東京一極集中が進み、名古屋駅前はあり余った東京資本の巣窟 となり、栄は地場資本の屍となった。

一極集中が進んだ東京は、日本で最もマッチング機会が多いところ で、一極集中に対する批判をよそに、日本全国から投資マネーを誘 引し続けている。今コスパ・タイパ、省エネ、ゼロエミッションを 大義に集めた投資マネーでて再開発し続けている。

商業敵の都市の起源を説明すると、「どうしても通り過ぎることが できない魅力」である。見過ごすことができない人が集まる魅力が あり、それが都市の核を形成し、そこでおきる様々なマッチングが いろんな化学反応を起こす。

この化学反応を目指して多くの人材などの投資が集まる。投資は消 費を伴う。大きな商圏を形成する。その周辺に収益をシェアするシ ェア経済エリアが形成される。これが経済圏である。都市の魅力の 本質はマッチングに対する期待である。

かつての広小路にビジネスセンターが成立していたように、有効な マッチングが実現する拠点が都市の核となる。現状それが名古屋駅 前に移行しつつある。それが地価経済に大きく影響している。

今鶴舞にソフトバンクがマッチング、インキュベーションの器を用 意した。それに対してオール名古屋の投資を誘引しようとしてい る。これが大きな化学反応を起こせば更なる投資を誘引し、さらな 投資は消費を伴うようになる。

ではなぜ鶴舞なのか?その一つの答えが、鶴舞は唯一世界に冠たる 輸送機器産業クラスター拠点である豊田に直結する鉄道上の拠点で ある。ただこの鉄道は地域交通でしかないが。

名古屋の都市経済圏は全国とのインターフェースである名古屋駅 前、名古屋地場資本の拠点である栄、そして産業クラスターの核、 豊田で構成される。

本来なら豊田・三河の収益が、名古屋の都市経済の中心(実効性あ るマッチングが一番多いであろう拠点)である栄に投資が集まり、 それに伴い消費が拡大して、名古屋経済圏が核の求心力を伴います ます発展する構図にならなくてならない。

しかし、この三拠点を直結する生産性の高い「都市間交通システ ム」がない。生産性の高い交通システムとは30分で豊田、栄、名 古屋駅を結ぶbullet train(弾丸列車)である。したがって名 古屋の中心であった栄に投資が進まず、失われた30年の間に地場 資本の屍エリアとなってしまっていた。

結果、新しいマッチングの拠点である名古屋駅前の地価がどんどん 上昇し続け、その一方で、栄エリアの地価は現状維持程度の上昇で しかなかった。現在、新たに栄エリアに当拠資本の投資が始まって いる。これはこれで重要ではあるが、不動産経済から言えば、今に なってなぜ東京資本の投資が始まったの?である。

この答えを東京で求めると、「単純に東京にお金が余っていたから でしょう。」であった。これでは新たな投資の効果が期待できな い。やはり豊田・三河資本の名古屋都市経済の核度期待されるマッ チングに対する投資が進み、新たな化学反応を期待した。

今回のステーションAiの面白いところは、立地が中区鶴舞にある 事である。名古屋駅前でもなく、栄、金山でもないことである。唯 一豊田につながる地下鉄鶴舞線沿線の新しいエリアである。

現状地域交通でしかない地下鉄鶴線であるが、豊田からの直接の乗 り入れ交通拠点の鶴舞で、情報拠点が生まれ、実効性あるマッチン グ起きて、どうしても通り過ぎることができない拠点になると、鶴 舞が名古屋経済圏の中心になり、都市機能の中心になる可能性があ る。第4極である。

鶴舞には鶴舞公園(オアシス機能)があり、その周辺部には再開発 の可能性のある市部が広がる。大学なども身近にある。要は未開発 のスペースは十分にあり、更に栄、名古屋駅前と言ったオールドエ コノミーから距離を置いたエリアである。 弊社の格言に「新規ビジネスは新しい器を求める」と言うのがあ る。新しい器であり、交通の拠点であり、周辺環境から十分に代4 極になりえる要素を持ち得ている。長い意味で都市構造を変えてし まう可能性がある。

都市の核が移動することは、それ自体が都市近郊の新たな胎動であ り、都市経済の活性化を意味し、まさに都市のダイナミックな進化 を意味する。名古屋の都市の発展もまさに核の移動のダイナミズム であった。

現時点では、オール名古屋のマッチングである。とかく名古屋は密 室でことを決めたがる。オープンではない。名古屋以外のビジネス プレーヤーがオール名古屋とオープンにマッチングする器になって もらいたい。ソフトバンクの手腕に期待したい。

以上

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