ニュースレター
主筆:川津昌作
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復権を目指す名古屋の栄エリア
〈2024年10月10日〉
今後注目されるであろう二つの名古屋の再開発「星が丘」「松坂屋
大改装」を議論したい。東京では100以上、構想も入れれば200
と言った再開発のプロジェクトが現に進んでいる。この東京で行わ
れている再開発を、単なる建物の更新と考えると市場の本質を見失
う。
東京の市場で起きているパラダイムチェンジは、地球レベルの省エ
ネ、都市の再構築再開発、消費者行動のタイパである。都市の再開
発は地球レベルの省エネを前提として、消費者行動のタイパを実現
するための再構築である。
「新規ビジネスは新しい器を求める」である。
「タイパ」とは「タイムパフォーマン」スである。狭義では若い世
代の時間を効率よく使う思考である。カラオケでサビだけうたう。
長いイントロを嫌う。ユーチュブの動画などを倍速で見る等々で
。
広義には、都市に集積する多くのオプション、情報、出会い、マッ
チングをすべて闇雲に行使するのではなく、効率よく成果を求める
行動になる。AIに対するニーズもタイパの一つと考える。
都心を商業の観点から定義すれば「どうしても通り過ぎることがで
きない魅力」である。行動経済学の観点で行えば「マッチングが多
いところ」。空間デザイン的に行えば「効率の良い交流が実現する
空間施設」である。
都市の定義はほかにもいろいろできるが、主なものをあげれば上記
3つとなる。中でも最近最も注目されているのが「マッチング」で
ある。今東京は日本で一番マッチングの機会が多いところと言われ
ている。
マッチングとは人、会社、社会との出会いでありエンゲージメント
である。その出会いにより生まれる様々な化学反応が期待される。
そして有効なマッチングが生まれるスペースづくりが、今の再開発
の目的のひとつでもある。
さてまず星が丘にあった、ボーリング場跡地の再開発である。星が
丘には三越百貨店のサテライトがあり、星が丘テラスが商業的魅力
をすでに持っている市場である。
狭いエリアながらも、なだらかな丘陵にカーブを描く導線は、山の
手をイメージする恵まれた地形はデベロッパーには非常に魅力を感
じるエリアである。
今回の星が丘の再開発の計画図を見ると、大学というインキュベー
ター施設があり、大きな緑地スペースがあり、低層ながらも商業施
設がある。ある意味通り過ぎれない魅力を増強し、若い人達のマ
ッチングが実現する有効なタイパエリアと理解できる。
話がそれるが、今回星が丘の再開発に登場する椙山女学園大学は非
常に野心的な大学に感じる。大学自体に特段の関係がない故詳しく
は解らないが、最近非常にユニークな先生方を招聘して注目を集め
ている。
既に退官されたが、国の審議会委員、日本不動産金融学会長、日本
不動産学会副会長を歴任された前川俊一氏が短期的ではあるがおら
れた。メインの明海大学退官後2017年椙山女学園に赴任され、
2019年には椙山女学園大学に日本不動産学会の全国大会を誘致さ
れた。
全国大会開催時、地下鉄星が丘駅から星が丘テラスを通り、カーブ
しながら、緩い上り坂を歩いて多くの著名な先生方が椙山大学本校
にたどり着いた。この大学の立地、周辺環境の魅力を多くの先生方
が、お手伝いの学生さんに褒めていたのを記憶している。
そして今又、現日本商業学会会長をなされている南智恵子氏が、神
戸大学退官後椙山女学園に赴任している。同様に日本商業学会の全
国大会がもし誘致できれば・・・、と考えてしまうが、いずれにし
ても注目したいユニークな大学運営がなされている。
さて次にあげる再開発が栄である。今や栄と言っても広く、また多
くのプロジェクトが進行中であるが、その中でも松坂屋百貨店の大
改装を最近マスコミが取り上げている。
報道によれば63億円をかけて、全体の3割を店舗改装するもの
だ。一つの百貨店の店舗改装と言えども、63億円と言う規模は、
上記の星が丘の再開発を凌駕しかねない規模である。その効果は栄
エリアとしても大きく期待したいところだ。
読売新聞の報道では、名古屋駅前エリアの隆盛に対して栄の「復
権」と言う言葉を使ってその可能性を報道している。松坂屋自体
は、大丸松坂屋グループの中でもトップの旗艦店である。方や名古
屋駅前のJR東海高島屋は今や売り上げ全国ランク4位に位置する
旗艦店だ。
当然エリア間競争に関係なく、両者の競合は名古屋経済圏にとって
も活性化になり、両方とも応援したい再開発である。改装後の百貨
店が、どうしても通り過ぎることができない魅力を再生することを
期待する。
しかしこの魅力をもって栄エリアの復権を議論するには物足りな
い。栄は地下鉄交通機関の中心拠点ではあるがこの交通システム
は、名古屋市内の生活交通でしかない。栄の商業施設の市場は名古
屋市内東部までで、自動車を使い漸く東部に隣接する長久手、東
郷、日進までである。そもそも市場が小さい。
省エネ、タイパのトレンドから言えば、鉄道を中心とした新交通シ
ステムで大きな市場を効率よく取り込む必要がある。現在、アジア
の諸国はじめ世界中が、自動車と併用して鉄道の都市間交通の整備
が進んでいる。これも都市のタイパ思考と考える。
豊田、三河の輸送機器産業クラスターエリアと栄、名古屋駅を短時
間(30分台)でつなげる交通システムがあれば、栄は復権するど
ころか、都市として再びアジアの盟主にもなりうる可能性があると
考える。
日本の中心にありそのアクセサビリティ―から、中部地方の産業都
市、観光都市、都心の魅力をネットワークする核となりえる。栄に
は最近、中日ビル、コンラッドホテル等内外の資本投資が始まって
いる。そろそろ新しい交通システムの議論をしてもいいころではな
いだろうか?
実現すれば、松坂屋等栄の百貨店の売り上げに大きく貢献し、栄の
地価は今の倍になるだろう。名古屋で新しく実効性あるマッチング
が倍増する拠点となる。名古屋経済にとって一番期待できる省エ
ネ、タイパとなる再開発を誘発するだろう。
以上
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