ニュースレター
主筆:川津昌作
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栄-大須-金山の新都市型ライトレール構想
〈2024年11月20日〉
先般、中日新聞(11月15日)に今話題の名古屋市市長選挙の候
補者の政策が特集されていた。そのテーマが名古屋のインバウンド
政策をどうするか?であった。
中日新聞が引用している観光白書のデータによると、訪日客の訪問
先での消費額(2023年度)が、東京都1兆1268億円、大阪
6306億円、福岡1933億円、北海道1456億円に対して、愛知県
は595億円となっており、愛知県はまさに蚊帳の外だ。
訪日客数などのデータから、訪れた都市の割合を見ても、2023年
度ベースで東京が5割、大阪が4割、これに対して愛知県が5%
台だ。東海三県合わせても10%に満たない状況だ。
地価経済で説明すると、コロナ禍以降の景気回復のけん引役がイン
バウンドである。全国の主要都市の地価を押し上げた理由として一
番に挙げられるのがインバウンド消費である。
ちなみに2024年3月の公示地価を見てみると、商業地の上昇率
が東京圏で5.6%、大阪圏で5.1%に対して名古屋圏が4.3%で
ある。不動産経済の有識者の見解は、インバウンド効果がほとんど
ないにもかかわらず、名古屋経済圏の地価の上昇率は、極めて“優
秀”と言う評価である。
地価上昇のけん引役はもちろんトヨタ関連の収益である。しかしそ
の一方で、将来のインバウンド効果を見越したホテル、商業店舗中
心の再開発も含まれており、名古屋圏の地価上昇をけん引している
という報道もある。
もし今後もインバウンド効果が期待できなければ、地価を上昇させ
続ける理由がなくなる事になる。来年の名古屋圏の地価はどうなる
事であろうか?
先にインバウンドの政策について、軽く議論しておこう。今やイン
バウンド政策は国家の存亡を左右する位置づけがなされており、特
に地方都市では、生き残るための唯一の活路となりつつある。当た
る当たらないか?はまさに地方都市の殺生与奪である。
近隣の岐阜を例にとれば、岐阜は金華山と言う歴史資産を持ち、以
前より斎藤道三を歴史的背景として育ててきた。しかし最近のブー
ムに目ざとく、織田信長を歴史的主要背景に修正してきた。
元より、斎藤道三と織田信長は敵同士であり、織田信長こそかつて
は岐阜の敵である事をうたい文句にしてきた。しかし観光産業で斎
藤道三では歴史的背景、知名度が弱いとみると、すかさず織田信長
のブームに乗り換えてきた。節操がないが・・・。
まさに地方で行われている観光産業立国としての国盗り合戦を行っ
ているわけだ。これに比べて愛知県は、日本中で比類のない三英傑
を擁し、この上ない観光産業ポジションを持っていると誤解し、さ
して振興努力をしていないという批判を免れない状況だ。
日本全国でそもそも「三英傑」と言う言葉が通じるのも名古屋だけ
である。家康は駿府、江戸であり、秀吉は大阪である。「三英傑
て、何?」であるが、名古屋だけが三英傑と言う言葉で完結してし
まっている。工夫の進化がない。
これに対して、名古屋城再建などが振興政策の例ではあるが、なぜ
か愛知知事が批判してしまっている。政治的な駆け引きの材料にさ
れてしまっている状況だ。まるで愛知県のジブリパークの敵のよう
な位置づけだ。
市と県が不仲であれば、当然愛知県内の産業振興の一枚岩になれ
ず、振興が成果を得るわけがない。「尾張は城でもつ」が愛知県に
行くと疎んじられてしまっている。と言ってしまうとまた愛知県に
不評を買ってしまうか?
政令都市と言えども、市役所は上位行政庁である県庁に対して敬意
がなく、県は歴史・規模で優る市に対する配慮が全くない。互いの
立場の政治的エゴを優先すれば、損するのは県民であり、市民であ
る。
さて、このようにインバンド政策に後れを取っている名古屋経済圏
であるが、上記のように地価経済がインバンド産業が振るわないに
も拘らず他の地方都市に比べて好調である。
更に、百貨店小売業が、実はインバンド効果で何とか横ばい業績を
維持できている東京、大阪に引けを取らず堅調であり、地方都市の
中では優位になっている。特に名古屋駅前の百貨店はインバンドの
恩恵がないのに堅調に成長しており、日本全国から注目されてい
る。バレンタインデーのチョコレート商戦など独自の百貨店ビジネ
ス企画力が高く評価されている。
インバウンドなし、名古屋経済圏の内需だけで、堅調を維持してい
るのが特徴である。この内需の牽引役の一つが言うまでもなくトヨ
タ企業群の利益である。
ここでの議論の結論は、インバウンドはインバウンドで頑張るとし
て、その遅れを嘆く前に名古屋の優れている点を再認識すべきであ
る。
名古屋経済圏の好調を維持するべく、域内の生産性を上げるべき
様々な政策を進める議論が必要である。新たなインフラとして栄と
大須、金山を結ぶ都市型ライトレール(LRT)の整備をあげたい。
都市型ライトレールとは昔の路面電車(名古屋の愛称、チンチン電
車)である。名古屋でこれまでよく登場する構想は、名古屋駅前と
栄を結ぶLRTである。これにより名古屋駅前リアと栄エリアをネ
ットワークして経済効果を上げる構想である。
今ここで弊社が構想するのは、栄、大須、金山エリアをネットワー
クして名古屋市民の消費行動の生産性をより高くするものである。
名古屋の物販消費は栄、大須、金山が中心である。このエリアの生
産性を高める新交通システムである。
比較するわけではないが、地下鉄東山線の「柳橋新駅」よりその整
備経済効果は、はるかに大きい。このラインが軌道に乗れば、次に
名古屋駅-名古屋城-栄のインバウンドラインを新設して、栄-金山
ラインにつなげ名古屋のインバウンド政策と内需のネットワークを
実効性あるものにできる。
栄-大須-金山のLRTは名古屋経済圏の内需成長に非常に大きなイ
ンパクトをもたらすと考えられる。将来の名古屋駅-名古屋城-栄-
大須-金山LRTの名称は「名古屋めしライン」でどうだろうか?名
古屋駅の味噌煮込み、栄のひつまぶし、大須の矢場とん、金山の手
羽先だ。ぜひ整備計画に格上げしてもらいたい。
名古屋は、海外からのインバウンドの前に、日本全国からの来名客
の開発余地がまだまだあるエリアである。やれることはいくらでも
ある。
以上
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